
同作は、第94回アカデミー賞で作品賞にノミネートされた。日本映画初の歴史的快挙だった。あれだけの名演を画面上に焼きつけたのだから、岡田が助演男優賞くらい軽々と受賞するのではないかと思ったくらい。
いずれにしろ、『ドライブ・マイ・カー』以来、岡田将生を「まー君」呼びすることをほんとうに禁じなくてはと思った。それなのにまさか主演最新公開作『1秒先の彼』でこの呼び名が復活することになるとは。
本作は、京都の郵便局員・ハジメ(岡田将生)が「なんでぇ? なんでぇ?」とぶつぶつ言いながら交番に入る場面から始まる。冒頭からものすごい不審者感を印象づけるハジメは、とにかくダサい。私服も性格も嫌になるくらいダサい。
こんな岡田君を見てしまっては、もう「まー君」と呼ぶしかなさそうだが……。

朝6時59分、7時に目覚しがセットされた1分前きっかりに目覚める。勤務態度も真面目で、バイクでの配達は爆速。優秀な局員に違いないのだけれど、同僚からは煙たがられている。
京都人のプライドを全面に押し出すハジメの嫌味ったらしい小言は日常のこと。局内一のイケメンだからおばちゃんファンがついていたりするが、いやいや性格があまりに残念な人なのだ。
根はピュアだから河川敷で「女ひとり」(永六輔の歌詞が滋味深い)を美声で響かせるギター弾き語りの桜子(福室莉音)に淡い恋心を抱くが、実はとんでもないつつもたせ。騙されてることに気づきもしない。
どこまでも残念なハジメに見どころはないものだろうか(とすこし心配になってしまうほど)。