オリンピック出場の女性アスリートが卵子凍結を公表したワケ「勘違いされることも」
卵子凍結のプロセスは
卵子凍結は、それぞれの身体の状態や生活環境などにより手術までの日数や費用も大きく異なるため、担当医との相談の上でスケジュールや行程を決めていくことが重要です。競技をしながら手術の準備を進めていた小松原さんの場合、どのようなプロセスを経たのでしょうか。
「大会などのスケジュール調整や、アンチ・ドーピングテスト対策との兼ね合いもあったので、卵子凍結を決意してから手術に至るまでは、1年以上の期間を要しました。
費用に関しては、私の場合『高刺激法』という排卵誘発剤の使用が多いプランを選んだのですが、内診や手術、凍結までを合わせて40万円弱かかりました。ただ、一回の施術で必ず終わるものではないそうなので、これから何回も続けていくとなると、まだまだ経済的に手が届きやすいものとは言えないなと思います。
具体的な行程については、初診が今年の6月27日、それから卵子を成長させるためと、排卵を防ぐために注射と薬の内服を毎日行いました。担当医と相談しつつ、アイスショーを行いながら準備を進めていたのですが、7月頭になってくるとお腹が少し張っている感覚があったのが印象的です。
2回目の診療が7月4日で、その時に卵子の育ち具合を診ていただき、手術日を7月7日に設定しました。術後検診が7月11日に行われ、すべてのプロセスが終了しました」
卵子凍結に関する情報や知識はまだまだ広まっていない
また実際に手術を受けた所感について、次のように説明します。
「卵子凍結の手術は、局所麻酔と全身麻酔が選択できます。過去に、私のマネージャーさんが他のクリニックで卵子凍結の手術を経験していたのですが、その時は局所麻酔だったということで『術中かなり痛みがあったので、個人的には全身麻酔がおすすめ』と聞いていたこともあり、私は全身麻酔を選びました。
手術時間自体は30分程度だったのですが、そのあとはよく眠り、痛みもそこまで強く感じませんでしたね。術後1週間が経過した今は、トレッドミルなどでトレーニングを行っていますが、だんだんと体幹の筋肉の感覚が戻ってきています」
手術を終えた今、小松原さんは「自分の体験を発信することで、皆さんの人生の選択肢が増えるきっかけになれば」と語ります。
「卵子凍結を公表してからは、たくさんの方から応援のDMをいただいてとても心強かったのですが、なかには『卵子凍結をするということは、他の誰かが代理出産をするということですか?』といった内容のものがいくつかありました。
私は、自分の体内で受精させて出産するために卵子凍結を決断したのですが、代理出産と混同されている方が想像以上に多く、『まだまだ卵子凍結に関する情報が世の中に行き渡っていないんだな』と気づかされました。
そういった状況で術前に全容を把握することは難しいので、手術を受けることを検討するなか自力で情報を収集するだけでは、不安も募るのではないかと思います。
もしも卵子凍結に関心を持った方がいたら、まずは自分の身体の状況を把握するためにも、専門家であるお医者さんに相談して、その上で自分のライフプランに合った選択を取っていただきたいですね」
<取材・文/菅原史稀 監修/六本木レディースクリニック院長・小松保則(卵子凍結に関する部分) 撮影/山田耕司> 1
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