――『憑きそい』を読むと「こんな怖い体験をしたらトラウマになるだろうな」と感じるのですが、実際に体験した山森さんはどうやって恐怖を受け止めているのですか?
山森めぐみ(以下、山森):怖い体験を作品にすることで浄化しているところがあります。自分が体験したことや見たものを描くとお祓いみたいな効果があるらしいんです。
映画の『リング』(1998年)で「貞子の呪いのビデオ」をダビングして他の人に見せるという展開がありましたよね。あの映画では呪いを広める行為として描かれていましたけど、実際に紙に書き写して人に見てもらうと災厄を取り除く意味で効果的なんだと思います。
自分勝手な話かもしれないのですが、「こんな怖いを思いをしたから浄化しておきたいな」という出来事を思い出すと、お祓い代わりに描いているような感じです。
――では多くの読者に読んでもらうほど山森さんが浄化されるような感覚があったり?
山森:たくさん読んでもらえるほど1つ1つの恐怖が薄まっていくかもしれないですね。だから増刷してもらえるとすごく嬉しいです(笑)。
――本書のタイトルにもなっている『憑きそい』というお話しに震えあがりました。山森さんの漫画には「生き霊」が出てくることがありますが、「生き霊」と「亡くなった人の霊」どちらが怖いと思いますか?
山森:生き霊というか、生きている人の方が死んでいる人よりはずっと怖いと思っています。生きてパワーを持っている人間が一番怖いですね。
――それはなぜでしょうか?
山森:亡くなった人と生きている人では熱量がまったく違うと感じます。例えば「階段」に出てくるアレは見た目は怖いのですが実害はそれ程なくて、「足にしがみつかれながら階段を昇らなければならなかった」くらいです。
私の場合、「これは生き霊だな」と感じるものは白目の部分まで全部真っ黒になっているように見えるんですが、生き霊に遭遇すると影響を受けてしまうというか、本当に具合が悪くなってしまうんです。
生き霊に取り憑かれている人や、その影響でトラブルが起きてしまっているのを目の当たりにしてしまうと「生きている人間の方が怖いな」と思います。人がどんな感情を抱いていているかは読めないので予測がつかない怖さがありますね。
――「憑きそい」も本当に怖い結末でしたね。
山森:本当に吐き気がするというか「この先どうなっていくんだろう」という現実的な怖さがありました。