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NHK『大奥』|病に伏した御台所、心身を犯された源内…登場人物たちの描かれなかった時を思い涙

源内は、体にも心にも、あまりにひどい傷を負った

 平賀源内(鈴木杏)が外の世界から持ち帰った情報に、偶然も重なり、赤面疱瘡への“サボン”獲得への道は一気に進む。
大奥

(C)NHK

 しかし、物語は、笑顔の裏に何を隠しているのか分からず、不気味なオーラを充満させる一橋治済(仲間由紀恵)の暗躍により様変わりしていく。  吉宗へ強い憧れを持ちながら、狭い視野によって、意次を敵視する松平定信(安達祐実)も、治済に簡単に動かされてしまっているように映る。
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 そして終盤、残酷な事件が起きた。意次から「口吸い」のご褒美をもらった源内が、足取りも軽く夜道を歩いていると、顔に“できもの”のある男たちに襲われる。ここで、源内のバックボーンが初めて知らされていった。
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 女物の着物を着て、結婚し、家を継ぐことに違和感があったこと。かわいがっていた弟を赤面疱瘡で亡くしたことで、「人生は短い」、己の人生ではない場所に留まっているべきではないとはっきり自覚したこと。本草学者となり、赤面疱瘡を撲滅してみせると家を飛び出したこと。そして意次に出会ったこと。そうした出来事が流れていく。  源内は、頭巾の女が指示した男たちによって犯された。家を出てからは、「あたしも一緒に蘭学を学びたいな」といった思いはありながらも、前だけを向いて、誰にも負けない好奇心と行動力で、光り輝いていた源内。

描かれなかった時間を想像すると…

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 そんな源内に、男たちは、体にも心にも、あまりにひどい傷を負わせたのである。それからしばしの間をおいて、源内は、大奥にいつも通りの明るさでやってきた。しかし、その体には、顔に“できもの”のある男が残した置き土産が刻まれていた。  このとき源内は、皆の前に、改良した針を手に普段通りのテンションで現れた。何事もなかったかのように。あの夜、傷を負ったあとからの源内はどうしていたのだろう。描かれなかった時間を思い、苦しくなった。  第13回では、いよいよ赤面疱瘡撲滅に向けた「人痘接種」が始まるが、その反発は予想以上に大きかった。 <文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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