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NHK『大奥』、“怪物”仲間由紀恵のおぞましい美しさと、その正体に気づいた将軍夫婦

蓮佛美沙子の演じる茂姫が放つ、月の光のような温かさ

茂姫の人柄は、見た目にもよく表れている。身に着けた打掛の金は、華やかでありつつ、決してけばけばしくはなく、温かみがあり、みなを照らす月の光のようでもある。 みなが顔をそろえる祭りの席でも、茂姫の周りは自然と笑顔が生まれていた。だが、定信いわく“志を持たない人の皮をかぶったバケモノ”である治済は、そうした優しい時間を許さない。やがて総姫、そして敦之助も亡くなった。 敦之助を失ったときから、茂姫の金の打掛は落ちた。彼女がまとい、周囲に放っていた温かな光は消え去り、赤で縁取りされた憎しみが残った。「あの怪物がやったのだ」と悟ったときの蓮佛の演技が、素晴らしかった。

仲間由紀恵の怪演に、“おぞましい”美しさを目撃

大奥(C)NHK

大奥(C)NHK

定信から話を聞いた家斉は、幼き日、体の奥に封じ込めた記憶を思い出す。母から勧められた茶を飲み、血を吐きむせながら「申し訳ございません。畳を汚してしまいました」と謝罪していた武女(佐藤江梨子)。 そのもだえ苦しむ姿を、恍惚とした表情で見ていた母。原作コミックの治済は決して美しくはない。原作とは全く印象の異なる、仲間を配したことで、肉体を伴った実写ならではの治済の怪物ぶりが一層際立ち、“おぞましい”美しさを目撃するという体験に震えた。 ラストは、松方(前田公輝)を連れ立って、黒木(玉置玲央)の元を訪れた家斉が、母にはない志と、「世の中を変えたい」との強い決意を語った。治済が“怪物”であることを知った家斉と茂姫の夫婦。家斉は志を宿した瞳に、茂姫は「あいつを殺して!」と絶望に落ちた瞳へ、それぞれに登場時とはまるで別の姿に変貌した第14話。 家斉の決意はいざしらず、茂姫の姿には心が痛むが、第15話では、黒木が家斉と手を取り合う決意をする。何かが前へと進むだろうか。 <文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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