深愛は行動を起こす。ネット上で、精神的に不安定になっている人を救いたいと相談した。「
あらゆるチラシを改造して連絡先を自分の電話番号にし、自分に救いを求めてくるようにすればいい」という興味本位の回答に、「これだ!」と反応するのだ。どうしてそれを選択するかなと思うのだが、客観性がないから、自分に都合のいいものだけを取り入れていくのだろう。

たくさんのチラシを那須川のマンションの郵便受けに入れ、様子を見ている深愛。平日昼間に、ハルキが私服で郵便受けを開けると、どさっとチラシがあふれ出る。
自分を慕っているハルキが那須川の息子だと知り、深愛は考える。
「奥さんの悩みの原因は、ハルキくんの不登校かもしれない。それなら私が! 私が店長の家族を助ける」
「自分はとりえがない」はずの深愛の、この自己顕示欲と承認欲求の高さには驚かされる。自己肯定感、高すぎるのではないか。自己肯定感という言葉のもつ曖昧さ、あやふやさ、そして危険性がよくわかる。
自分なら助けられると決めつけている深愛の心の内は、「奥さんによくなってもらって、以前と同じように店長と自分が会えるようになりたい」思いだけが渦巻いている。その行く先は「店長との結婚」だ。