ただ、西門の悲劇はこれでは終わらず、海は
「優秀な生徒である北田くんを称えてください」と西門に“命令”する。険しい顔を見せる西門に海は「この状況で本人を称えられないのはどうなんですかね」「『ありがとう』と頭を下げる」と耳打ち。西門は言われるがまま、岳と握手を交わして「ありがとう」と言って頭を下げる。
西門は表情筋をヒクヒクさせながら屈辱的な表情を浮かべ、海はさらに「
いい表情ですよ理事長。そういう人間味あふれる表情こそが、創作の最大のヒントになるんです」とサディスティックな言葉を続ける。プライドが高い権力者の西門が、二回りは年下であろう海に服従させられている様子はゾクゾクした。
そして海のもと「K」で働き、料理人を目指すことにした岳。自分が作ったまかないに「K」の料理人全員から合格をもらい、正式な料理人になるためにもがき苦しんでいた2話でも、登場人物間のやり取りに目を奪われる。
京都の有名料亭の跡取りで
「K」の料理人である乾孫六(板垣李光人)は、岳に対して敵対心を燃やしているのか、誰よりもつっけんどんな態度を取る。2話後半で岳が作った渾身の肉じゃがが料理人たちに認められ、正式な料理人として岳を歓迎するムードが漂う中、孫六は早々にその場を退散。彼は岳を簡単に認めないタイプなのだろう。
そして3話で岳は海から、“特別なお客様”を迎える日の厨房を任される。その客とは、岳の幼馴染で数学オリンピックのライバル・武蔵神楽(久保田紗友)と彼女の父だった。
海は岳に数学への想いを断ち切らせようと、彼にこの日の厨房を任せていたのだ。孫六とバディを組んで難局を乗り越えた岳。孫六はついに彼を認め、初めて自分の名前を岳に教える。二人の仲が急接近した。