NHK『大奥』“寵愛”を受ける家定(愛希れいか)を中心にシスターフッドの香りを感じた幕末編初回
人の出会いと出会いが、気持ちのいい風の流れを生む
家定への思いもさることながら、身請けの際の正弘からの瀧山へのそれも胸を打った。男女のもつれから、母が上役を刺し殺した罪人であったために、陰間にならざるを得なかった瀧山。それゆえ、大奥勤めも瀧山は断ったが、正弘は「それはそなた自身の咎ではない。何か言うものがあれば、私は正面切って戦おうと思っておる」と、はっきりと伝える。
恩義を感じた瀧山は、家定を“いやなこと”つまりは家慶の虐待から守るために、西の丸大奥総取締になる。しかし瀧山が報いたいと感じた恩義も、もとは瀧山が正弘を勇気づけたからこそ始まったこと。
「己の翼で飛ぼう」と強い意志を持った瀧山が、正弘の兜の緒を締め直させた結果、瀧山に翼を与えた。そしてともに家定を救うことになった。さらに家定も、外国からの脅威の迫る日本を前に、正弘に「もっと自由に飛んでみよと」大きな翼を与えていく。出会いと出会いが、気持ちのいい風の流れを生んでいく。
家定の正室として、薩摩から有功とうり二つの美男子がやってくる!
さらに16話は、どこかシスターフッド的な匂いもあった。正弘と家定の関係はもちろん、力添えした広大院や、もともとは「女性を怖がらせないためにと女のなりを始めた」陰間としての苦労を重ねてきた瀧山も、女性と心の距離を近づけることができる。恐ろしいバケモノに向かうという点こそ同じだが、前回とはかなり異なる趣のある回だった。
家慶の急死により、家定は第13代将軍となる。そんなシスターフッド的な匂いが結実した、正弘と瀧山を前に凛とした家定が言う「そなたのために将軍になった。そなたが自在に空を飛ぶためにここに座っておるのだ」には、涙がにじんだ。次回はついに、家定の正室として、薩摩からやってきた胤篤・天璋院(福士蒼汰)との物語が描かれていく。シーズン1で男女逆転大奥を象徴する人物である有功を好演した福士が、今度は江戸幕府の終焉を見届ける役柄で再び登場してくる。展開自体の早い幕末だが、楽しみが尽きない。
<文/望月ふみ>望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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