中原さんが、この漫画を公開した意図をお聞きできますか?
「冒頭でも申し上げましたが、この件があったのは7年前です。7年も経ってようやく自分の中から出すことができました。
なぜ今更(いまさら)、と思われるかもしれません。この件は私にとって、ベビーカーがすぐそばにある所で受けた圧力の恐怖であり、忘れたい惨(みじ)めな記憶であり、また思い返すと自分が過去にしてきた差別と向き合わなくてはならない、触れたくない闇でした。
近年ネットの差別やハラスメント被害の体験などを見ると、『私はこうやって撃退した』『軽やかに切り返した』など、カッコよく対応したケースがおおく、羨(うらや)ましい限りです。
私が思うのは、傷ついた人の殆(ほとん)どはやり返すことなんかできず、ネットで愚痴ることもできず、私と同じように何年もモヤモヤを抱え込んでいたり、身にへばりついた嫌な気持ちを見ないように日々をやり過ごしているのではないかということです」
この漫画を読んだ方々に、どのようなことを考えて欲しいですか?
「被害に遭った後ってとても孤独です。何年も誰にも言えず孤独です。
この話は私もそうだったよと言いたくて、後からもがく中で、友人の言葉やエイミーさん(外国人協会の差別相談担当)などから得たヒントが誰かの苦しみを軽くすることに役立つかもと思って描きました。
ツイッター(現X)で公開した事で、多くの反響を頂きました。これはドイツで起きた事ですが、どこの国にも、どの地域にでも、あらゆる形態で日常に起こっている事だと思います。この話を読んでいろんな人の立場に立って『私だったらこうする』と色々想像してみてほしいです。
また私が書いた情報を全て鵜呑(うの)みにせず『実際どうなんだろう?』と疑ったり興味を持って欲しいです」
<取材・文/女子SPA!編集部>