まず『私に触れないで』を描いた経緯として、「もともと、とある商用漫画の賞に向けて読み切りのつもりで描き始めました。当時は
セックスフル問題だけでなく、それを周囲に吐き出せないことで、二重に苦しんでいたんです」と樋口さん自身がセックスフル当事者だったことを口にしつつ、「そこで『
漫画にしたら誰かにわかってもらえるかも?』という思いから描き始めました」と話し始める。
「ただ、『こんなことを描いたらセックスレスで悩んでいる人を傷つけるのでは』ということにとても悩みました。そんな時、たまたまネットの質問箱に、同じくセックスフルの状況で悩んでいる人の投稿を見つけて、『同じ悩みを持つ人がいるのなら、もしかしたら他にもいるかもしれない!』と思って制作しようと決めました」
とはいえ、製作は想像以上に精神をすり減らす作業になったらしく、「トラウマを思い出して吐きながら描いたこともあったりなど、メンタルがしんどくなることがありました。それでも掲載後に『
漫画にしてくれてありがとう』というDMをいただく度に、何度も何度も勇気をもらって、ここまで描き進めることができました。また、あまり人には言えない悩みでもあり、こうして気持ちを多くの人と共有できたので、『本当にこの漫画を勇気を出して描けて良かったな』と思っています」