渚が務めるEBSテレビでは、労働時間に徹底的に配慮したりなど手厚く新人AP2人を育てたものの早々に退職。カウンセリングルームを設置したが、カウンセラー自身が精神の不調を訴えて休職。結局は渚の指導は無駄に終わりただ単に時間を浪費しただけ。加えて、メンタルヘルスの改善は一向に図られず、余計に不安定になるばかり。
表面的には“働き方改革の優等生”と言える同社だが、渚を見ていると働きやすい職場とは言い難い。そもそも、EBSテレビにとっても好影響につながっているようには見えず、働き方改革の現実を皮肉る痛快な内容だった。

出典:株式会社ワーク・ライフバランス「企業の働き方改革に関する実態調査2022年版」
実際、働き方改革コンサルティングをおこなう株式会社ワーク・ライフバランスが2023年3月に発表した
調査結果*によると、「働き方改革が思うように進まない原因」として「働き方改革=残業削減と認識し、残業削減以外の施策をしていないから」(26.2%)と答えた人が最多。次いで「とりあえず思いついた施策をやってみたにとどまっているから」「社内調査や分析で終わっているから」(24.5%)だった。(*調査期間:2022年12月13日~2023年1月28日、調査対象:全国の20歳~70歳男女、有効回答数:事前調査 2,201件、本調査330件)
渚のように“何となくの残業削減・施策導入”などに困惑している人は珍しくない。働き方改革が労働者の助けになっておらず、むしろ負担になっている職場は決して少なくなさそうだ。
とはいえ、働き方改革が悪いわけではない。馬車馬のように働きたい従業員もいれば、定時で帰りたい従業員も、その中間の従業員もいることを理解したうえで、議論を重ねて少しでもより良い働き方を模索するしかない。
議論なき働き方改革は既存の負担を違う誰かに押し付けることに他ならない。それはとりわけ優秀で優しい人にしわ寄せが行きやすい。
『不適切にもほどがある!』を見ていると、
正論で押さえつけるのではなく、対話を重ねていくことが現代社会で働く人の役目のように感じた。衝突しながらも自分の意見をさらけ出して戦う『不適切にもほどがある!』の登場人物たちの奮闘に今後も期待したい。
【前回記事】⇒
生徒の尻をバットで殴る“昭和の暴力教師”が「令和の方がやばい」と思ったワケ|ドラマ『不適切にもほどがある!』
<文/望月悠木>
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望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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