――今回の作品で演じられた、“れいこ”というキャラクターについて教えてください。
前田:基本的に彼女の日常は描かれないのですが、元彼が亡くなり、そのお葬式に行くという本当に悲しい一日から始まります。自分は何も寄り添えなかったと、ぽっかり穴が空いちゃっている状態。このまま一日を終われないなっていう感覚だったと思います。
そんな時にレンタル彼氏を名乗る一人の青年と出会い、本当に初めましてだったからこそしゃべれることもあると思うんです。なので、れいこにとってはちょっとだけ日常から外れた、自分と向き合える時間みたいなのものが描かれていきます。
――監督の体験がベースにある物語ではあるものの、それとは別にキャラクターとして演じていたのでしょうか?
前田:れいこ自体は、そうですね。監督が生き写しになっている役柄はなくて、監督のオリジナルのキャラクターでもあるんです。わたし自身もそのこととは切り離しつつ、作品を一緒に三島監督と作るという感じで、監督と向き合った部分はあるかもしれないです。
――なるほど、それで作品を観ている人の中には、彼女と自分自身が重ね合わさる瞬間があるかも知れないですね。
前田:そうですね。特に大阪・堂島編は街中で撮影がたくさんあったので、日常の中にれいこがいるみたいなイメージが、撮影していてもありました。劇中ではれいこにフォーカスが当たっているだけで誰もが普通に生きている世界だから、他に思うことがある人もいるだろうし、何も思わない人もいるだろうし、本当に日常の一コマですね。
――ところで2024年が始まったところですが、どういう一年にしたいでしょうか?
前田:今年はきっと新しい流れになるんだろうなって思っています。やったことがない経験をしていきたい想いはずっとあるので、そうするために準備している段階です。人生って、自分で限界を決めつけちゃいけないなっていうのは思います。
――それは何がきっかけでそう思うように?
前田:独立をしてから、いろいろなお仕事をいただける新しい出会いがたくさんあって、自分は「もうこれしかない」「これでいい」などと決めつけると、そういうふうに人生がなっていくなって思うんです。だから、自分で自分のことを縛り付けることが、一番経験から遠くなっていく、経験ができなくなっていくなって。わたしはそういうところから抜け出したくて独立したのですが、でもやってみて良かったなと思うんです。
あと、「もういくつだから」と決め付けをしがちですよね。「もう30代になっちゃったから」みたいな。そんなこと関係ないって思う自分でいて、いろいろな可能性が増やせるのであれば、そっちでいたいじゃないですか。だから「いつまでも何やってんの?」って言われるような大人でいいやと思っています。