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“男性と結婚したい息子”に猛反対する「理解がありすぎる」父親。心配の理由に胸が痛む|ドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』

セクシャルマイノリティの“不利益”にどう向き合う

 セクシャルマイノリティを題材にしてきた作品は、誠のように当初は無理解から気味悪がっていた人が、当事者との交流を通して理解を深めていくパターンが多い。1話で誠は大地がゲイであることに嫌悪感を示していたが、大地と交流するようになってからは嫌悪感はなくなり現在は友情を育むまでになった。とはいえ、嫌悪感ではなく“エビデンス”を用いてセクシャルマイノリティを否定しようとする、今回のようなケースはとても珍しい
 同性婚のようなリベラル寄りな話題に否定的な意見が寄せられた際、「ヨーロッパでは」「若い世代の間では」という主語を使って反論されるケースは少なくない。しかし、真一郎はイギリスの、しかも若い世代がセクシャルマイノリティを“不利益”と感じている傾向をデータで示している。エビデンスに反論することは容易ではなく、そのうえイギリスの若者を出されてはいよいよ反論は難しい。  差別的かつ不寛容な社会を見直すための議論は当然必要ではあるが、いま現在セクシャルマイノリティを公表することのデメリットが多いことも事実。そういった厳しい現実に大地たちがどのように向き合うのかは見物である。

「俺、この人を苦しめてんのかな」当事者の葛藤を丁寧に描く

 そもそも、真一郎の説得に大地が立ち向かえなかった要因として、真一郎が離婚したとはいえ自分の父親だったことが大きい。実際、後で円に「お父さんから反対されたのか?」と聞かれた時、大地は「ただ反対されたんなら言い返せたと思うんです」と返答。そして「『心配なんだ』って言われて、あんな顔されて、どうして良いかわからなくなった」「『俺、この人を苦しめてんのかな』って」と話す。親が自分たちの関係を受け入れてくれなかったこと、自身のセクシャリティが親を苦しめていることに葛藤が生まれ、何も言い返せなかったという。  これまで偏見や差別に対して自分なりの考えを示し、その度に誠のアップデートを手助けしてきた大地。恐らく“他人事”であれば大地もいつも通り、気づきを与えるようなアドバイスができていたはずだ。しかし、自身が当事者となり、それでいて親と対峙するとなれば簡単にはいかない。  ただ単に新しい発見を与えるだけではなく、当事者の苦しさを表現しており、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』がいかにセクシャルマイノリティというテーマを繊細かつ丁寧に扱っているかに驚愕させられる。  次回が最終回になる本作。エビデンスだけではなく、自身の親とどのように向き合うのかも注目したい。 <文/望月悠木> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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