最後は、放送開始直後から物議を醸していた“月9”『君が心をくれたから』(フジテレビ系)。その理由は、永野芽郁演じるヒロイン・雨が、事故に遭ってしまった大好きな太陽(山田裕貴)のために“心=五感”を差し出すという過酷な設定でした。しかも、雨は虐待されていたり、いじめられていたり、太陽と出会うまで孤独な境遇にいます。

画像:フジテレビ『君が心をくれたから』公式サイトより
そんな重い内容に、SNSの反応を見ると初期の離脱者もちらほら。実は筆者自身も、第2話まで観て一度は離脱したひとりでした。だって、月曜日から苦しすぎるし、切なすぎるし、救いがないように感じてしまったから。でも冬クールの終盤に初回から一気に最終回まで走ったイマ。本作が冬クールのNo.1!「観てよかった」と声を大にして言いたいです。
はじめはあまりに負の衝撃が強かったけれど、誰もがもっている“奇跡”を丁寧に描いた作品でした。味覚を失い、嗅覚を失い、触覚を失い、最後には視覚も聴覚も失う——当たり前に他者と繋がり、自分がそこに存在することを教えてくれる“心(五感)”の大切さを、全11話を通して伝えてくれました。
何より、雨と太陽を演じた永野と山田の演技が秀逸。永野は、雨をただ不幸で可哀想なヒロインにせず、困難を乗り越える強さと美しさを体現しました。一方山田も太陽を、ただの明るい青年ではなく、逆境に立ち向かうまっすぐさと人を信じて寄り添う純粋さで、深みのある人物像に仕上げています。だからこそ、雨と太陽が織りなす物語は、実に美しかった。
ふたりの結末についてここでは触れませんが、「互いの存在を認め、必要とし、愛し愛されること」。それがどれほどの“奇跡”なのかを、ドラマを通して伝えてくれた珠玉のラブストーリーでした。未視聴の方や離脱した方には、ぜひ全話を通して観て欲しい作品です。
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4月からの春クールに放送されるドラマも続々と発表されていますが、それまでに今一度、この冬クールのお気に入り作品を見返してみてはいかがでしょうか。
<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>
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日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:
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