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『光る君へ』史実との違いに賛否の声も「気にせずに突っ走っていただきたいです」山崎ナオコーラさん語る

90歳の読者もいる雑誌で「ルッキズム」をテーマにしたら

山崎ナオコーラ『ミライの源氏物語』(淡交社)――昨年、出版された『ミライの源氏物語』が大評判です。もともと茶道の雑誌への連載だったとか。 <そうなんです。最初は毎月、現代語訳の訳者をひとりひとり取り上げて書いていくのはどうかというご依頼でした。ただ、考えていくうち、自分らしい仕事というか、現代社会の中で、『源氏物語』をどう読むかといったほうが良い仕事ができるかも、と思ったんです。 ただ読者には90歳のお茶の先生もいらっしゃる。『ルッキズム』『ホモソーシャル』『トロフィーワイフ』といったことをテーマにしたエッセイとなると、“え?”となるかもしれないから、丁寧に書いて怒られないようにしようと頑張りました(笑)> ――実際には、怒られるどころか、年配の読者の方々にも好評だったと聞いています。 <意外に怒られないんだなと思いました。むしろ“私もそう思っていた”という感想が結構ありました。ご高齢の方でも、『源氏物語』の中に“あれ?”と思うことがずっとあったみたいなんです。言葉にしなくてもずっとモヤモヤを抱えていたと>
『ミライの源氏物語』より

『ミライの源氏物語』より

社会のアップデートへの貢献には、SNSの存在が大きい

――実際には“私もそう思っていた”という声が多かったとのことですが、それでも『ミライの源氏物語』は、“今の時代”に合ったエッセイだと言われることが多いと思います。この10年ほどでいわゆる社会の価値観が大きく変わったと言われるようになり、多様性という言葉もすごく耳に入って来るようになりました。 <社会のベースが更新されていて、私はすごくよくなってきたと思っていますし、そこに仕事をしてくれたのはSNSの存在が大きいと思っています。小さい違和感なんかはみんなずっと抱えていましたよね? そうした小さな違和感をSNSで表明して、“私もそう思っていた”“私も”と繋(つな)がれた。 それまでは、たとえば何かテレビを見て“あれ、何かおかしい”と思ったとしても、“私だけかな”と飲み込んでいた。それを言葉にするようになって、繋がって、それが繰り返されていったことで、社会全体がアップデートされてきたんだと思います。私は、それはすごくいいことだと感じています>
SNS

写真はイメージです(以下同じ)

――『ミライの源氏物語』への感想しかり、モヤモヤを抱えていた人はずっといたと。それを発信する場がなかっただけで。 <そう思います。でも繋がる場所がないと、気持ちを遠ざけてしまい考えることもできなくなってくるから、言葉もなくなる。私も20年前は言葉がなかった。言葉を持って、ちゃんとした考えになって、さらに文章がどんどん出てきたのだと思います>
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書店に“男性作家と女性作家の棚を分けるのをやめてほしい”と言いに行った
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ミライの源氏物語』著:山崎ナオコーラ 出版:淡交社 Bunkamuraドゥマゴ文学賞
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