残念な扱いを受ける上に、書生という立場からも、あまり発言をしないキャラクターですが、仲野はしっかりと存在感を放っています。
仲野といえば、高い演技力をもって、シリアスからコミカルまで幅広い作品で実力を認められてきた俳優です。過去に5作品もの大河ドラマに出演しており、
2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』では初主演・豊臣秀長役が決まっています。
俳優・松尾諭のエッセイを原作とした連ドラ『拾われた男 LOST MAN FOUND』(2022年)でも主演を務めており、伊藤沙莉とは夫婦役で共演。ふたりの掛け合いがとても印象的でした。『虎に翼』においても、仲野は少ない台詞と表情の変化で伊藤の芝居を受け、物語にいいテンポを生み出しています。
筆者が好きなのは、
第10話の猪熊家での朝食シーン。仲野はほぼしゃべらずに、笑いを誘いました。「高等試験を受ける日がきたら、私は必ず一発で合格してみせます」と意気込む寅子の横で、試験に落ちたばかりの優三は徐々に表情を曇らせしくしくと泣きはじめます。「一発かどうかは重要ではないけれど」「受かるまで何度でも受ければいい」と、周囲の必死のフォローを受け、徐々に泣き笑いに。台詞が少なくとも、
伊藤をはじめとする周りの芝居を、仲野が豊かな表情で引き立てているのです。
第13話では、寅子たち女子部による法廷劇の最中に乱入してきた男子学生に、同級生・よね(土居志央梨)が突き飛ばされたシーンでは、肉体的に伊藤を受け止めました。怒った寅子が男子学生にネコパンチをお見舞いしようとしたのですが、体を張って守ろうとした優三がもろに受けてしまったのです。そのときの顔ったら……笑(ちなみに仲野は前述の『拾われた男 LOST MAN FOUND』でも、伊藤のグーパンチで吹き飛ばされています)。そんな優三の存在は、もはや物語の“癒し系”として欠かせません。