SF風の世界設定に惹きこまれる『滅相も無い』(TBS系、火曜よる1時28分~ほか)はジワります。突如として日本にあらわれた7つの“巨大な穴”。調査するも穴の正体はわからず、人々は穴とともに暮らしはじめます。

画像:MBS 毎日放送『滅相も無い』公式サイトより
やがて穴を“神”と崇め、「穴のなかには救済がある」と唱える小澤(堤真一)をリーダーとする団体が立ち上がりました。団体では、年に一度12月を穴の祝祭とし、希望者は穴に入ることができる決まり。小澤のルールで、穴に入る前に「なぜ穴に入ろうと思ったか」を語り、記録しなければなりません。集まった8人の信者たちがひとりずつ、人生の断面を1話を通して語りはじめます。
8人の信者を演じるのは、窪田正孝、中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想、中嶋朋子、平原テツ、古舘寛治と実力派揃いです。
意味不明な世界線なのに、描かれているのは人間のリアルすぎるエピソード。登場人物たちが語る人生史からは、それぞれが抱いてきた疑問や悩み、人には話しにくい想いが浮き彫りになっていきます。
その人生史の描き方も斬新です。すべて同じスタジオセット内で展開され、
6人のスタジオキャストが全話通して出演し、約150もの役をこなすという手法。映像編集に捕われない魅せ方は演劇的でありながら、違和感なく受け取ることができるから驚きです。それもそのはず、監督・脚本を務める加藤拓也氏は、舞台で数多くの賞を受賞した人物。加藤氏がさまざまな角度から、人間が抱える“業”を描く新感覚ドラマに仕上がっています。