当時は、どこに行ってもハクについて聞かれるのが嫌だった

スタジオジブリ『千と千尋の神隠し』より
――入野さんご自身は、子役から活動されてきて、2001年公開の『千と千尋の神隠し』でハクを務めました。アニメファンでなくても知っている作品です。
入野「20年以上前の作品で、僕が中学生のころのことなので、覚えていることは少ないんです。それに当時はそんなに反響を感じていませんでした。いろんな人に観てもらったという感覚はあったんですけど、その反響の大きさが、ものすごいものだったんだというのは、大人になって改めて認識した感じでした。
当時はどちらかというと、嬉しさもありましたけど、正直、何をやってもハクのことを言われてしまうのが嫌だった時期もありました」

スタジオジブリ『千と千尋の神隠し』より
――そうなんですね。
入野「でも大人になっていくと、こうして取り上げていただけることが自分の名刺代わりになる。どこに行っても分かってもらえるものがあるというのは、すごく大きなことだなと。でもそういうことを感じるようになったのも、ここ数年になってからですね」

――名刺になると感じられるようになったのは、キャリアや年齢、時間が大きいですか?
入野「海外に行ったときにも分かってもらえるというのは、大きいと思いました。あとはいろんな作品をやらせてもらうことで、『千と千尋の神隠し』に囚われるのではなく、キャリアとして、いい作品に出来たことを、自分の自信につなげられるようになりました」
――俳優としてもご活躍されています。舞台にも立たれていますが、たとえば『屋根の上のヴァイオリン弾き』(2013、2017~2018)のように、同じ作品に数年を経て立ったりすると、特に自身の変化を感じやすかったりしますか?
入野「『屋根の~』で主演の市村正親さんとご一緒できたことは、僕の中で大きなことです。1回目と2回目でご一緒したときには、全く違うやりとりができました。自分の中でも、市村さんとしても変化があったと思いますが、ちゃんとより良い方向に変化していっていると思います。自分を信じて前に進んできたいですね」

――先輩の姿は刺激になりますか。
入野「もちろん。舞台もそうですが、どの現場でも、一流の方たちと一緒にお仕事させていただけることは貴重です。
基本的に僕たちは、お客さんとして観る場合、目の前にあるのは完成したものですよね。それで“すごいな”となるけれど、そこに至るまでに、どんな歩みがあったのか、どんなことに悩んだり、どんなふうに捉えたりしてきているのかは、普通は見えない。ご一緒することで、そうしたことに少しでも触れられるのは大きいです。