“全部覚えている”好きだった人に惚れなおし、結ばれない恋の関係は物語の始まりだった|大河ドラマ『光る君へ』第31回
まひろのもとを訪れた道長。それは物語を書いてほしい、と依頼するためだった。その依頼が道長とまひろの関係をより強固なものにしていく。
物語の始まりは、結ばれない恋の関係だったようだ。
道長(柄本佑)がまひろ(吉高由里子)のもとへとやってきた。
「枕草子」に代わる物語を書いてほしい、という依頼のためだ。その物語で一条天皇(塩野瑛久)のお渡りがない中宮・彰子(見上愛)の心を慰めたい。
まひろはその願いにすぐには答えを出さなかった。
書けって言われて書けるものではないし、まひろとしては賢子(福元愛悠)に『カササギ語り』を燃やされたばかりだ。そのショックも少なからずあるに違いない。
答えを保留にしたまひろ。しかし、書きたい気持ちはある。道長と会ってからは、自分が書く物語を探しているようにも見えた。
あかね(泉里香)に『枕草子』の感想を聞いたり、『枕草子』の写本を借りたり。
その中で、まひろはそれぞれが自分らしいものを書いていると気がつく。清少納言は、定子への真っすぐな想いを、あかねもまた自身の心に率直な歌を。
まひろは自分らしさとかなんなのかと弟の惟規(高杉真宙)に聞く。怒らないでよ、と言いつつ、「根が暗くて鬱陶しい」と思ったとおりのことを口にする惟規。その言葉にまひろは何か思いついたような表情を浮かべた。
話をしていることで何か気づくことがある、というのは確かに、と思う。何かを作るときにはやはり、ひとりではなく、外部からの刺激も大切なのだろう。
物語を書くことを決意したまひろは道長に文を出す。中宮のために書く物語にふさわしい良質な紙を用意してほしい、と。
まひろに頼まれた道長は越前の紙を大量に持って、自ら届ける。
まひろが、「越前の美しい紙にいつか歌や物語を書いてみたい」と言っていたのを覚えていたのだ。その話は、偶然石山寺で再会したあの日にしていた。賢子がこのあとに6歳だという話をしていたので、6年以上前にまひろが言っていた言葉を覚えていた、ということになる。好きだけど結婚には至らなかった元恋人にそんなことされたら、惚れ直しそうなんだが……道長はまひろの字も覚えているし、プライベートのメモリ、まひろだらけでは? といらぬ心配をしてしまう。
そして嬉しそうに初めて自分の願いを聞き入れてくれた、というもんだから……。本当にもう……観ているこちらがニヤニヤしてしまう。
自分らしいものとは?
言動から覗く、道長の想い
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