『朝ズバッ!』時代、25歳頃の私
あるとき、私とほとんど年齢が変わらないと自己紹介のときにおっしゃっていた男性教官が、ハンドルをブルブル震えながら握り締める私に向かってこんなとんでもない一言を放ったのです。
「あのさぁ、物覚えが悪いのは年齢のせい? それとももともと?」
おぉ!?
これは、今の時代アウトではないでしょうか……? さすがの私も、これにはなんと答えるのが正解か、とっさに判断がつきませんでした。この発言は絶対に指導者として、及び人としてアウトだと思うのですが、車内の密な空間で教官も油断をしてしまったのでしょうかね。
思えばお酒の席などで、例えば身体的特徴を「いじられ」、それに複雑な気持ちを抱きながらも、なんとなく自虐的に流してしまう……なんていう経験、男性女性問わず、一度や二度は経験している方、いらっしゃるでしょう。私もそうでした。ここに来て、そういったセクシャルな不規則発言のみならず、年齢に関してもこういった暴言が飛んでくるフェーズに自分は入ったのか!? といった脳内会議を数秒のうちにその場で繰り広げた私。
本来でしたら、
「先生、それはどういった意味でしょうか? 私のようなアラフォーが免許を取得するのはいけないことなのでしょうか?」
と詰め寄って抗議することが正解だったのかもしれません。その場が丸く収まればいいやという逃げは、結局次の世代にその負債を残してしまうことになるとよく聞きます。絶対に受け流してはいけない、と。
そろそろ服装もセーター中心に
年齢やセクシャリティに対する何らかの嫌がらせのようなものが発生した場合は、自分だけのためのみならず周りのためにきちんと戦うべきなのだと、頭ではわかっているのに……。私は結局その場を笑ってやり過ごしてしまったのでした。要するに「大人の対応」なるものにかこつけて誤魔化し、逃げてしまったのです。
これは本当に良くなかった。どういった意図でこの発言が飛び出したのかわかりません。どんなに教えてもまったく運転が上手くならない私に対していら立ちを覚えてしまったのかもしれませんが、いずれにしてもこれは年齢に対する暴言ともいえます。
今でも、その場で抗議しなかったこと、その場ではできなくても、例えば教習所側に抗議をするくらいのことはしてもよかったのかなあ……なんて考えることがあります。世の中は年齢や性別による区別及び差別についてどんどん厳しくなっており、昔に比べればそれを取り巻く環境は良くなっているのでしょうが……。
それでも、思わぬときにこんな出来事に遭遇することがある、そしてまだ私は正面切って戦うことができない……。結局はまだまだへっぴり腰な自分の小ささに反省した次第なのです。
ちなみに、無事免許は取りましたが、肝心の車には納車してからまだ1回しか乗っていません。だって怖いんだもん! とほほ……練習しないとね。
納車したらこの笑顔!この笑顔のために運転がんばらなくては
<文/アンヌ遙香>
アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『
アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中