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朝ドラ『虎に翼』第1回と最終回を綺麗につなげた!“39歳俳優の顔の付着物”とは

前景におさまっていたことが感動的

 寅子以外の判事として唯一、第1回からレギュラーメンバーであり続けたのが、桂場でもある。全130回の間、桂場役の松山は、微妙に差をつけて細かな動作を繰り返しながら、役全体としての繊細な微動の表現を極めた。  第22週第108回、東京地方裁判所所長時代には、寅子が提出した意見書を能楽的にそろりと元の位置に微動させたり、最高裁判所第5代長官になると、東京家庭裁判所所長になった久藤が、家庭裁判所の父と称される多岐川幸四郎(滝藤賢一)が書いた意見書を置く第24週第120回。  書類に手を伸ばすまでの桂場の厳めしい無音の微動は、まるでサイレント映画俳優の佇まいにまで極められていた。微動の俳優・松山ケンイチの存在感をこれでもかと見せつけて迎えた第128回。尊属殺の重罰規定に対して、桂場が長官であるとともにひとりの人間として違憲判決を下した瞬間では、それまでの重々しさから少し解き放たれるように、唇を左右へむにゅむにゅと複雑に動かす(長官室に戻って引き出しから出したチョコレートを急いで口に入れるのも絶妙)。  唇から全身まで、神経をはりめぐらせて一貫した動作を繰り返した松山。第129回と続く最終回で桂場が、本編の最終カットで、カメラと視聴者に一番近い前景におさまっていたことが感動的だった。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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