えっ嘘だ…37歳俳優が「地上波連ドラ単独初主演」という事実に驚き。ここにきての“キャラ変”に注目
地肌そのもののような演技
アサヒ生ビールのコマーシャル「出張とおつかれ生です。」篇でも、居酒屋のカウンター席に座った松下が、一杯目のビールを口にして「はぁぁぁ~」とやさしい息を吐く。こんなさりげない音の響きにも、ビールCMの宣伝を超えて物語性を放出できる人。シンガーソングライターでもある松下洸平その人が、ひとつのリリックになっている。 では、「子どもだからなんだ」と子どもたちに高圧的な態度をとってばかりいる『放課後カルテ』の牧野峻役に、これまで同様にやさしい物語性を読み取ることはできるのだろうか。ビールCMのようにさりげない音に注目するなら、「おはよう」など日常的な言葉を発するときの峻は、なぜかゴニョッと早口で語尾までちゃんと発音しない。 その代わり彼は猫背の後ろ姿を印象付けながら、前のめりですたすた歩く。歩くだけで物語を生みだす俳優である松下の語尾に豊かなあいまいさを感じながら、この猫背から静かな語りをキャッチできる。 これまでの目に見えて上質な天然素材を一枚一枚丁寧に脱ぎながら、よりシルキーな地肌そのもののような演技が徐々に見えてくるのだ。 <文/加賀谷健>


