みたらし加奈(臨床心理士):私たち大人が思っているよりも、子どもは大人の関係性を見ています。たとえば両親がいるご家庭の場合、片方の親がどちらかを強くなじっていたり、小馬鹿にするような態度を見せたりしていると、子どもはそのパワーバランスをそのまま受け取ってしまうのです。そして、その不均衡な関係性を、自分自身に当てはめてしまうこともあります。
「自分もパートナーを強くなじってもいいんだ」とか「パートナーから強く言われても我慢しなきゃいけないんだ」というようなインプットになってしまうのです。

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コミュニケーションのひとつひとつを子どもは敏感に察知しているので、日頃から保護者が、理不尽なことにNOと言えている姿、またそのNOが尊重されてる姿を見せてあげるのが、非常に大事だと思います。どうしてもそれが難しい場合、2人きりになったときに「本当なら尊重されるべきなんだよ」「あなたはNOと言っていいんだよ」と伝えるのも1つの手かなとは思います。
みたらし加奈:性的同意はセックスのときだけのものと思われがちですが、実は日常生活と地続きなのです。たとえば友達とランチに行くときに、「本当はパスタを食べたくないけれど、相手が食べたいと言ったから、とりあえず合わせてみた」、こういう積み重ねでNOと言いづらくなっていくのです。
性教育は、セックスのことだけを教えるというよりは、日頃からその子にとっての快、不快が尊重されることが大事だと教えてあげることや、NOと言いやすい環境を作ってあげることでもあります。
だから、たとえば子どもに恋人ができてその話を自分にしてくれたときに、「相手に対して、嫌なことは嫌って言ってもいいんだよ」「少しでも相手にモヤモヤしたり、言いにくいことがあったら、いつでも私に相談してきていいんだからね」と伝える。こういう関わりも性教育なのです。
犬山:保護者が学びつつ、その姿を見せることの重要性を感じます。パートナー同士でまずはNOと言い合えるようになる、そしてNOと言われても機嫌を悪くしない、尊重し合う姿を見せる。
「NOって言うけどあなたのことが嫌いって意味じゃないよ」「NOって言っていいんだよ。それで不機嫌にならないし、あなたの意見を尊重するし、NOって言われたから嫌いになったりしないからね」って語りかける。
保護者ができることがたくさんあります。
<文・イラスト/犬山紙子>