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妻とのセックスレスに悩む男に41歳俳優が適役だといえるワケ。うつろな表情の“お願い”姿が

売れない脚本家を描く面白さ

『それでも俺は、妻としたい』  足立紳は、趣里主演の朝ドラ『ブギウギ』(NHK大阪、2023年)で脚本を担当し、他にも『百円の恋』(2014年)などの代表作がある。2020年公開の映画『喜劇 愛妻物語』では、『それでも俺は、妻としたい』同様に原作、脚本、監督もつとめた。  同作でも売れない脚本家・豪太を主人公として、妻・チカとのセックスレスに悩む。これがもし売れている脚本家がブイブイいわせる物語だったら、全然面白くならないだろう。間が抜けてこそチャーミング。人間味がある脚本家像を描くから面白い。脚本家が脚本家を描く面白さがある。  足立作品ではないけれど、生田斗真主演ドラマ『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日、2021年)でも売れない脚本家が主人公だった。『三島由紀夫vs東大全共闘~50年目の真実~』(2020年)などの豊島圭介監督が演出を担当して、ここでもやっぱり的確で簡潔な描写が映画的に処理されていた。

映画的に計算された動作

『それでも俺は、妻としたい』 『それでも俺は、妻としたい』第1話で、ひときわ映画的だなと感じる場面がある。冒頭場面のモノローグで規定されたように、豪太は基本的に家にいて、ほとんど一日中、妻とセックスすることばかり考えている。  不登校ぎみの息子の目を盗んで、こっそり手慰みにふけるような人である。そこへ制作会社のプロデューサーから連絡が入り、再現ドラマのシナリオライティングを依頼される。  久しぶりの仕事。今晩はご褒美にありつけるぞ。と意気込む豪太はアクアパッツァを作る。でもチカは全然とりあってくれない。リビングのソファで動画を見ている息子の様子をうかがうチカ。ひとり丸椅子に座る豪太。おねだりを続ける。  まず両手を握り(手慰みの延長?)、お願いの合図。そのあと左手をすっと動かして耳の裏をかく。足元はかかとを浮かせている。なんとなく流動的な一連の動作が、映画的にこまかく計算されているなと思った。深夜帯に放送されるテレビ東京系列放送には、たまにこういう当たりドラマがある。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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