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Netflix『阿修羅のごとく』昭和男を演じる“俳優4人”の色気がすんごい! ドロ沼展開で「最も輝いていた男」は

今っぽいレトロ感で、昭和の風景を見事に再現

昭和レトロな世界観がイマっぽい映像美にも魅せられました。衣裳やヘアメイク、小物、セットの映し出されるすべて。至る所に昭和の時代背景が反映されており、制作スタッフたちの本気度を感じます。缶コーヒーのプルタブがちゃんと完全に離れる仕様になっていたり、雑誌『暮しの手帖』も当時の号が置かれていたり。 見ればすぐに“昭和”と分かるけど、決して古臭くない。当時の色使いやデザインのレトロさを活かしながら、すべての画角に昭和らしさを感じさせる見せ方が徹底されているのです。 Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』俳優の演技の面でも、その再現度は光ります。ダイヤル式の黒電話(黒じゃないものもありますが)の扱いが、全員とっても自然。受話器を肩と耳に挟んだり、右耳から左耳にスムーズに持ち替えたり、口元に手を当てたり。 そして「ふたりで包(くる)まるひとつの分厚い毛布」。綱子と貞治、滝子と勝又がそれぞれに関係性を表現するアイテムとして使われていたのも印象的です。昭和の生活をリアルに再現しているからこそ、それらをチェックしたり思い出したりするのも面白いポイントでした。

「日常のなかにあるドロ沼」がリアルすぎる

こちらはNetflix版に限ったことではありませんが、改めて『阿修羅のごとく』の描く人間の業が、凄まじくリアルだと感銘を受けます。最近の映像作品は、視聴者に考察させたり、ジェットコースターのような展開で次々と真実が明らかになったりするものが主流。しかし、リアルな世界ではどうでしょうか? Netflixシリーズ『阿修羅のごとく』夫が浮気をしているかも……と疑念を抱いても、何もせずやり過ごす女性も多いように感じます。また、いけないと分かっていても、ダラダラと関係を続けてしまうこともあるでしょう。ちょっとした出来事で、急激に心が変わることもあるでしょう。 「女はね、(浮気や不倫について)言ったら負け」「人間なんて厚かましいもんなんだから」など多くの台詞は、令和のイマ聞いても頷いてしまいます。視聴者に対しても、細かく心情や関係性を説明することも、すべての真実を明らかにすることもありません。暴かれないことにこそ、そこにあるドロ沼にリアリティを感じるのですNetflixシリーズ『阿修羅のごとく』更にいうと、登場人物たち一人ひとりのキャラクターが、役者それぞれによって再構築されたからこそ、Netflix版においても向田邦子が表現した四姉妹の物語を作品のよさをそのままに、改めて楽しむことができたのだと思います。それほどにすべての俳優が素晴らしい! 何度も観返したくなる1本です。 ======== ちなみにNHK版『阿修羅のごとく』は未視聴だった筆者ですが、今回NHKオンデマンドで初視聴。45年前の作品とは思えないほど引き込まれ、見応えがありました。恐るべき向田邦子脚本。令和の実力派俳優たちと是枝監督をはじめとするスタッフによって再構築された傑作、昭和生まれの方は特に必見です。 <文/鈴木まこと> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
鈴木まこと
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201
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