茜さんは就活のためにも、障害者手帳を取得しようと決めました。取得には、医師による診断書と証明写真、身分証明書を持って、市区町村の障害福祉課などで申請する必要があります。

茜さんが取得した障害者手帳(写真は本人提供※障害者手帳は発行する自治体や発行年度でカバーの色が異なります。ご本人の特定を避けるため、写真にモノクロ加工を施しています)
「
障害者手帳があれば、障害者雇用で働くことができます。事業規模によるようですが、法律で企業には障害者を雇用する義務があります。健常者と同じ一般雇用で働くこともできるので、持っていて損はありません」と茜さん。
一定の規模以上の企業には、障害者を一定割合雇用する法的義務があります。茜さんのいう一般雇用で働くというのはいわゆるクローズ就労といって、就職先に障害の内容を開示しないで働くことです。これに対し、主に障害者雇用枠での就業のことはオープン就労といいます。障がいを持つ方にとって、オープン就労・クローズ就労それぞれにメリット・デメリットがあります。
茜さんが障害者手帳申請のため早起きをしたところ、母親がいつもと違う様子に気が付き「どこに行くの?」と尋ねてきました。
障害者手帳取得の手続きに行くと伝えると、
「
そんなことやったら障害者になるじゃない。障害者の窓口に行くってことでしょう。周りの人に見られて、障害者だって噂されるよ。近所で笑われるよ」
と、真っ先に世間体を気にしたことを言い出すのです。そのまま茜さんと玄関で喧嘩になります。
母親は茜さんが一人で家を出ることを頑なに阻止しようとし、「お父さんが行ってきてあげて」とリビングにいる父親に声をかけました。「あげる」という上から目線の言い方に怒りを覚えた茜さん。「あげるってなによ!」と怒鳴り玄関にある靴を投げつけて、何とか玄関を出ていきました。
その後市役所で申請を完了して、無事に障害者手帳を取得。母親への“反抗”を経て、就活を始めることができました。