今期の朝ドラ『おむすび』も、どちらかというと批判やツッコミのエンゲージメントの高い作品に感じます。
一方でライトな視聴者層からは「橋本環奈ちゃんを見ているだけで癒される」「コミカルな内容で朝から元気になれる」などという意見もあります。
誰もがスキのない洗練された作品を求めているわけではありません。

連続テレビ小説 おむすび Part2(NHK出版)
先日、脚本家の三谷幸喜さんが『あさイチ』(NHK)に出演し、「朝ドラの脚本をやるならどんなお話にしたいですか」とたずねられた際に、三谷氏は「絶対ムリだと思います」「朝ドラ、本当に難しいし、毎回15分でちょっと盛り上げなきゃいけないし」と語っていました。
朝ドラという国民的な枠を担当するにあたって、プロとして当然の意識です。それもあり、有名脚本家の中では、朝ドラのオファーがあっても断る人も少なくないといいます。
昨今、朝ドラでは複数の脚本家が得手不得手のテイストの部分を分業して脚本を担当するパターンが増えてきました。これらは、少なからず朝ドラが神格化し、制作者側も
「朝ドラの名にふさわしい完ぺきなものを作らねばいけない」というプレッシャーの表れではないかと思うのです。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」オリジナル・サウンドトラック Vol. 1(SMJ)
個人的には三谷氏をはじめ、坂元裕二氏やバカリズム氏などが手掛けた個性的な作家さんの自由な朝ドラを見てみたい希望があります。ただ、感情を揺さぶる独特な世界観が持ち味の脚本家・遊川和彦氏が様々な条件を出して思うままに執筆したという『純と愛』は、視聴者の反応は芳しくないものが多かったですが……(筆者は好きです)。
雑音はあれど、『おむすび』も、脚本・根本ノンジ氏のコミカルでほっこりな作風が生かされた、朝から明るくなれる朝ドラに相応しいいい作品だとも言えます。ドタバタで先の見えない展開も逆にワクワクして、毎朝が楽しみです。最終回までの盛り上がり、期待しましょう!
<文/小政りょう>
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦