このように橋田寿賀子さん、大石静さんなどの有名作家の作品であっても、どこかツッコミどころ満載の作品が多々あったのです。

連続テレビ小説 おしん 完全版 5 太平洋戦争編(NHKエンタープライズ)
ですが、昔の朝ドラの万人受けしない部分から脚本家の作家性や信念を感じることがあり、それがドラマ作品としての面白さでした。放映時間15分の中で尺が余り、物語のダイジェストやドラマのイメージソングが流れるのも、そこはかとない味がありました。
それと同時に、かつての朝ドラは朝の忙しい時間の中のひとときの楽しみとして、
サクっと軽く視聴できるライトなものであったはずです。
『ゲゲゲの女房』や『あまちゃん』あたりから、朝ドラは視聴者層を老若男女全世代に広げ、多くの国民が注目する人気コンテンツになりました。それまでも高視聴率を常にキープしていましたが、SNSの広がりもあいまって、話題性はさらに上昇していったように思えます。
また、SNSによって忌憚のない
感想や考察が自由に発表できて拡散できるようになったことは、その盛り上がりに拍車をかけました。常に内容が話題になることで、録画、見逃し配信や再放送を駆使してまで見る人も増えました。

連続テレビ小説「あまちゃん」オリジナル・サウンドトラック(ビクターエンタテインメント)
お笑いコンビ・オードリーの春日俊彰さんも若手俳優を覚える際「ドラマだったら、NHK朝ドラ、あれだけ一発押さえておけばいい」と『あちこちオードリー』(テレビ東京系/2024年10月2日放送より)で言っていたように、ドラマというより一種の情報番組のようになっている感さえあります。つまり、朝ドラを
“楽しむ”ことより、話題のために“見る”ことが目的となっている人が多くなったように感じます。
「合わないなら見ない」のではなく、朝ドラという情報を得るのがルーティンとなっているため、見ざるを得なくなっているーータイパを重視する現代人にとってわざわざ朝、時間をとって見る毎日の15分を無駄にしたくない感が強いのでしょう。
昨今の朝ドラへの誹謗中傷は、SNSで批判やツッコミを入れて話題の潮流に乗ることで、本人にとっては「無駄となった」朝の15分を、なんとかして有意義なものにしようとしているようにさえ思えます。