さらに心強かったのは、実姉のフォローでした。
「姉は1人目を自然分娩で出産し、2人目を帝王切開で出産しています。つまり、どちらの痛みも経験しているんです。姉は義母に対して『私はどちらも経験していますけど、どちらも違った痛みなので比べることなんかできませんよ。ただ一つ言えるのは、どちらもラクな出産ではありません』とハッキリ言ってくれたんです」
それでも義母は「あら、そうなの」と言うだけで納得していない様子。さすがに気まずくなった義父が義母を連れて帰宅しました。
「それまで義母とは良好な関係でしたが、初めて義母に対して嫌な感情が生まれた瞬間でした。義母が夫を出産した頃は今ほど帝王切開が当たり前じゃなかった時代なので、偏見があったのかもしれません。夫も姉も『年配の人の言っていること気にするな』と言ってくれましたが、命がけでかわいいわが子を出産したのになんでこんなことを言われないといけないんだ…と悔しくて泣きました」

そのことがあり、退院後もなんとなく義実家と距離を置くようになってしまいました。
そんななか、義母に消化器系の病気が見つかります。腹腔鏡手術が行われ、無事に手術は終わったのですが……。
「手術の翌日にお見舞いに行くと、義母は『痛い痛い』と大騒ぎ! 看護師さんたちも手を焼くほどの騒ぎようで、義父は同室の患者さんたちに平謝りでした」
一般的に、腹腔鏡手術は開腹手術に比べて傷が小さいので、痛みも比較的少ないと言われています。それなのに痛みに騒ぐ義母を見て、マユさんと夫は……。
「私の出産のときに言われた一言は、私も夫も忘れていませんでした。普通にお見舞いを終えて病室を出ると、夫は『手術なんてラクなんて言っているから、罰があたったんだね』とつぶやいていました」
どんな手術も、どんな出産も、ラクなわけありません。この経験を経て、もう二度と義母は「帝王切開はラク」とは言わないことでしょう。
<取材・文/nami イラスト/ただりえこ>