「万年いじめの対象でした」20代ギフテッド夫婦が明かす“子ども時代の生きづらさ”
いじめられてもおかしいのは相手!貫く論理性
ギフテッド特性によって人間関係に難しさを覚える話は、当事者やその親から語られることが多い印象です。そもそも一般的な子どもたちと違う特性があるので当然なのですが、こうした問題は、ギフテッドに限らず、日本の横並び教育の弊害でもあるように感じます。
続いて、夫のNaoyaさんの子ども時代に苦労した話を教えてもらいました。
Naoyaさん「僕も苦労したのは、いじめの対象になったことですね。僕の場合は、万年いじめの対象でした。その中でも、小学校高学年から中学くらいにかけては、周囲も社会性が成長途上のため、特に激しかったです。
僕は黙っていじめられるタイプではなく、喧嘩は買ってやり返すタイプでした。僕としては、周りの論理が間違ってるのは明確だったので、いじめられながらも『この人たちもいつかは僕の言ってることがわかるだろう』という自信はありました。本来学校に通えなくなるのはいじめる側であるべきだと考えていたので、学校にも通い続けました」
「Naoyaさん強い!」思わず唸ってしまいましたが、Naoyaさんとしては、強いとかそういうことではなく、あくまでも自分の論理に従い続けた結果なのだといいます。この時、ご両親のリアクションや支えなどはあったのでしょうか。
Naoyaさん「親のリアクションは普通というか、特に対処はされませんでした。もちろん両親なりの苦労はあったと思いますし、クラスメイトと喧嘩したときに学校に呼び出されるようなこともありました。ただ、私の目線で見たときに、いじめがわかってから変化があったとかは、ないように感じています。
先ほど、学校にも通い続けたと言いましたが、僕が受けたいじめは、教科書に落書きがされるとか、親から見て、わかりやすいアラートを感じるような行為がなかったんです。そもそも僕の場合、落書きをされる前に喧嘩が勃発する感じでした。
親の接し方として良かったなと感じていることとしては、頭ごなしに怒るタイプの人ではなかったことです。喧嘩の際も、僕が手を出していたとしても、まず僕の主張を聞いてから判断してくれていたので、そこは良かったです」
ギフテッド特性を発揮できる人とできない人の違い
ギフテッド特性を持つ子に限らず、能力が高いがゆえに周りと馴染めず、疎外感を覚えることを「浮きこぼれ」と言うそうです。こうした浮きこぼれの問題は、だんだんと知られてきている印象ですが、ギフテッド当事者の2人から見て、「浮きこぼれ」になる人とそうでない人には、どんな違いがあり、何を意識できると良いのでしょう。
Naoyaさん「僕自身は経験からしか語れませんが、無理して周囲に合わせるのは良くないのではと思います。特性が明らかに違うのに合わせ続けると、どこかで無理が生じて問題が表面化していきます。無理に合わせてやり過ごすよりも、環境を変えることを考えるほうがいいんじゃないかなと。僕の場合は高専に行くことでそれが叶いましたし、他にも海外を目指すとかも良いかもしれません」
Maiさん「浮きこぼれの問題は、なかなか難しいところですよね。私自身は浮きこぼれたことは大変でしたが、長い目で見ると「程良い挫折経験」を積めたことは人生のプラスにもなっていると思います。周りと合わなくて不登校になる経験も、自分自身で内省するきっかけになりましたし、両親やカウンセラーなど多くの方のサポートを通じて、糧にすることができました。
あとは、挫折を感じたときに、自分をわかってくれる人や場所があることは大きいのではと思います。私の場合は、5〜20歳まで合唱団に所属していました。合唱団は自分を取り繕わずにいられる場所だったので、学校生活で悩んでも安心できる場所として機能していました」
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「人と違う」ということは、一般論では良いことと見られる場面も多いです。しかしMaiさんとNaoyaさんの話からは、規格外であればあるほど、実生活では苦労が多いことがわかります。
今回は、自分の子がギフテッドかどうかといった問題に限らず、子どもを育てる親として、子の特性を見ていくこと、寄り添うことの重要性を感じる話だったように思います。
【Mai】
ギフテッド特性ある子のためのフリースクール・個別指導塾「Lagoon」代表。自身もギフテッド特性を持ち、幼少期には不登校を経験。SNSでは当事者のリアルや役立つ情報を発信し、総フォロワー数は1.8万人。JAPAN MENSA会員。YouTube:@MAI_gifted
【Naoya】
ケープタウン大学博士課程在学中。野生動物の動作解析をロボット制御に応用する研究を行う傍ら、フリーランスとしてIT企業の技術開発、コンサルティングに従事。2018年度に経済産業省の未踏IT人材発掘・育成事業に採択、スーパークリエータ認定を受ける。
<取材・文/おおしまりえ>おおしまりえ
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518
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