物語の緊張感を中和させる、“給水所”のような安心感
本作は基本的に重々しく展開されるが、重厚感がありすぎると疲れてしまう。ただ、波佐見が登場することにより、作品の空気感が若干和み、“給水所”のような安心感を与えてくれる。まさにスタンプのシーンが象徴するように、ストーリーから脱線させず、作品の空気感を壊すことなく、波佐見はアイスブレイクさせてくれる存在だ。
染田をはじめ、心麦たちを追いつめる検事・阿南由紀(瀧内公美)といった周辺人物の過去を掘り下げるなど、ストーリー進行は決して早くはない。それでも、間を持たせているのは波佐見の陽キャ感が大きいように思う。
もう1つの重要な役割「松風の魅力を引き出す女房役」
波佐見の役割は“緩衝材”だけではない。松風は友哉や阿南、事件の真相を追う雑誌記者・神井孝(磯村勇斗)と対峙するシーンが多く、彼らと接する際には常にバチバチである。シリアスシーンが目立つ松風ではあるが、波佐見と接する際にはかなり緩い一面を見せる。
2話中盤、弁護士事務所内で友哉が容疑を否認せず黙秘を続けていることに心麦は首をかしげる。すると、松風は「『僕やってません』、で警察が」と口にして、すかさず波佐見が“警察役”となって「え? 君、やってないの?」と返す。急に取調室を舞台にした即興コントを開演した。
シリアスシーンでの登場率が高いだけではなく、松風は表情の変化が乏しいため、“堅物弁護士”とイメージされやすい。ただ、波佐見と接することにより、松風の人間味やユーモラスな一面が垣間見えることができる。松風の魅力を引き出す女房役としても機能しており、波佐見は出番は少なくないものの、かなりの重役を担っているキャラと言って良い。
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着々とキャリアを歩んでいる森崎がここに来て明るいキャラで印象を与える続けているが、もっと違う陽キャも見てみたくなる。ただ、今は波佐見が出るシーンを心待ちにしながら、『クジャクのダンス、誰が見た?』を楽しみたい。
<文/望月悠木>