「それを聞いて『え、智也がフリーだと偽って浮気? あのヤロー!』と、怒りの炎にガソリンが投入されたような気持ちになっていたら、その女性が『
智也さん、今すぐ近所にいるので呼んできます! 私も納得いかないので3人で話し合いましょう』と深刻な顔をして部屋を出て行ったんですよ。私も、そりゃ納得いかないよなと思いました」
そして10分ほど経つと、何食わぬ顔の智也さんが「あれ、佳代ちゃんが来てる! 昨日はごめんね」と呑気に謝ってきたそう。
「怒り狂いながら『誤魔化そうとしても無駄! 最低の浮気男め! あの女の人はどこ?!』と騒ぐ私に智也は『え、え、何言っているの? 浮気なんてしていないし、女性って誰のこと?』と心底ビックリしている様子で。その表情が嘘だとはとても思えなかったのでお互いの話を擦り合わせてみたら……まぁ結論からいうと彼女は空巣だったんですよ」
実は佳代さんが見た女性は、智也さんが鍵をかけ忘れてコンビニに行っている隙に勝手に侵入して、部屋を物色している最中だったのです。そこへ佳代さんがやってきて浮気相手と思い込み騒いだため、女性はその筋書きに沿った演技をすることで現場から逃亡したようで……。なんとも機転の利いた空き巣ですね。
「被害は何年も前に4万円で購入した腕時計と、智也が友達に返し忘れないようにホワイトボードにマグネットで貼り付けていた一万円札でした。その後は警察を呼んだりでバタバタして、『とにかく、短い時間の外出でも絶対に鍵をかけるように』とキツく言われていましたね」
そして智也さんは「時計はまた買えばいいし、お金もまた稼げばいいけど、とにかく佳代ちゃんが空巣に刺されたりしないで本当によかった!」と、涙目になりながら心配して無事を喜んでくれました。
「それがすごく嬉しくて。無事に仲直りした私達は空巣被害に遭ったばかりなのにもかかわらず、たくさんピザをデリバリーしてパーティーを楽しんだんですよ」
「それ以来、お互いに防犯意識が高まって、戸締りは何度も確認するようになりました。それにしても、空巣にいきなり掴み掛かるような行動をとってしまったことを反省しています。いくら我を失なっていたからとはいえ、危険すぎますよね」と苦笑いする佳代さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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