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人気ネコYouTube、飼い主に動物虐待疑惑。“リアリティーショー的仕掛け”が暴走させるものとは?6歳歌姫ののちゃん動画にも共通

6歳の歌姫ののちゃん動画と共通する構成

 たとえば、問題になった炭酸水を与える動画(現在は削除)も、もちまるの首ねっこを押さえて口を広げてがぶ飲みさせたとかなら、完全に虐待でしょう。  しかし、動画ではもちまるが手で触って、一舐(ひとな)めしてその刺激に驚く、というものです。ある意味、ネコの自由意志にまかせて、それが許容される範囲だろうという下僕の判断によって、微笑ましいシーンとして提供されている。そこに、動物のリアルを映し出そうとしている。 “飲ませた”のではなく“飲んだ”という事実をおさえたうえで、飼い主の愛情と遊び心による配慮が行き届いたことを見せて笑わせるというのが、『もちまる日記』の論法です。  けれども、筆者はこの配慮の行き届いたリアリティーショーのような構成に既視感を感じました。それは、6歳の歌姫ののちゃんこと、村方乃々佳の動画チャンネルです。姉妹が喧嘩する様子をアップして炎上したのは記憶に新しいところです。
 あのチャンネルも、撮影者である母親はきちんと姉妹を諭(さと)し、保護者の愛と庇護を証明したうえで、リアリティーショー的な構成を持っています。そこには当然、自分の子供を痛めつける意図はありません。すべて家庭愛と善意によって成り立っている。  しかしながら、そうした悪意などあるわけがないという自負が、かえって脳内の報酬系を暴走させる恐れはないのでしょうか?

善意で作られた面白リアクションを見せる仕掛け、悪につながる可能性も

 『もちまる日記』に戻ると、穏やかさと愛に満ちた空間において、動物が何か面白いリアクションを見せるための仕掛けが、善意の作為(さくい。つくりごと)によって設けられている。  この“決して痛めつける意図はございません。皆さんもおわかりですね”という暗黙の了解が、結果的により大きな無意識の悪につながってしまう可能性が露見したために、潜在的な反感が爆発した。  これが、今回の大炎上に至った理由でしょう。  では、動物の野生をほんのりと残したまま、バラエティ番組的な骨組みを持った都合の良いコンテンツに落とし込んだ下僕のアイデアは、何を映し出しているのでしょうか?  これは、現代社会に対する警鐘を鳴らしているとも思うのです。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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