「作品としてのかっこよさみたいなもの」とは少し距離を置いた本に
――ファンの方が知らない情報も、この本には書かれているんですか?
與:全然ありますよ。ファンクラブでは話したことがあるんですけど、「俺のことをこれ以上知りたくない」って思う人には読まないでほしい、って伝えたくらいです。
――たとえば、どんなことが?
與:前の恋愛のこととか普通に書いてますね。芸能界って、アイドルやアーティストに限らず、俳優さんや女優さんも含めて、日本ではあんまりそういうプライベートな話ってしないじゃないですか。芸とは関係ないことだから。
僕自身、こういう職業でそういうことを自ら明かしている人ってあまり聞いたことがないですし。だからこそ、なかなか無いことを言っているなって、自分でも思います。
なので今回のフォトエッセイは、これまでのものとはまったく違う仕上がりになっています。従来の写真集では、作品としてのかっこよさみたいなものを追求してましたが、今回はそういうものとは少し距離を置いています。
「自分らしく生きたほうがいい」というメッセージに矛盾したくない

『與真司郎フォトエッセイ 人生そんなもん』(講談社)
――そもそも赤裸々に半生を語ろうと思った理由は何でしたか?
與:僕は「自分らしく生きたほうがいい」って、いろいろな場所で言っているんです。なのに、自分のことを隠していたら、それって矛盾してるなって。正直、気持ち悪いなって感じたんですよね。
ただ、ここまで書いていいのかって思った部分もありましたけど、でもここまで来たら、隠しててもしょうがないなって。自分が言ってることと、やってることがズレてたら意味ないし、だったらちゃんと話そうって思いました。
――こうしてフォトエッセイで今の想いをカタチにすることで、得られたことって何かありましたか?
與:以前はAAAっていう大きな看板があるから、それを大きくしたいという思いが強かった。アイドル、アーティストの道をまっすぐに進んでいきたかった。でも一方で自分自身は、いろいろな人と語り合って、いろいろなことを学んで、自分の経験をシェアしたいタイプでもあった。だから、こうやって本のかたちでシェアできることは本当にありがたいです。自分の中でも整理がつきましたし。
インタビューやレビューの作業で、昔のことを思い出すことも多くて。「このときの自分、嫌だったな」とか、「この感情、本当に苦しかったな」とか、読み返しても思うことがたくさんありました。
でも、だからこそ、この本を読んでくれた人が少しでも勇気をもらったり、「前に進もう」って思ってくれたら嬉しいです。「一人じゃないんだ」って思ってくれたら、それだけで十分です。