
(画像:サザンオールスター「Relay~杜の詩」配信ページより)
これを、サザンオールスターズの「Relay~杜の詩」と比較するとわかりやすいでしょう。神宮外苑の再開発に疑問を呈した歌詞が話題になりましたが、これは最初から最後まで新聞っぽい、ジャーナリスト口調の歌詞で成り立っています。
<地球が病んで未来を憂う時代に 身近な場所で何が起こってるんだ?>、<麗しいオアシスがアスファルト・ジャングルに変わっちゃうの?>
つまり、桑田佳祐のメッセージを伝えるために作られた曲です。問題の設定が明確であり、歌詞の作者と語り手が一致している。そして、時事問題であることが聞く人に伝わるように、芸術性を排除している。
「Mine or Yours」が、そのような曲でないことは明らかです。にもかかわらず、切り取った一部がクローズアップされる事態になってしまいました。
ほとんどの人が曲そのものを置き去りにしている点ではいっしょ。自分の主義主張を訴えるツールとして歌詞を考えがちな現状を浮き彫りにしたと言えるでしょう。
優れた芸術は時代を映す鏡です。宇多田ヒカルの「Mine or Yours」は、皮肉な形で、いまの空気を伝えてくれたのでした。
<文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter:
@TakayukiIshigu4