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千葉県の団地→遥か遠い限界集落に移住した家族が始めた“商売”とは。込めた思いを本人に聞いた

古民家宿のコンセプトは「人としての原点を体感できる場所」

古民家での暮らし そんな近藤さん一家の想いが詰まった「古民家ゆうなぎ」は、単なる旅行先ではなく、自然に触れた「人としての原点の暮らし」を体感できる場所にしていきたいと語ります。具体的にどういった体験ができるのでしょう。 裕佑さん「生活体験型の宿として、梅の収穫や川遊び、畑しごとなど、季節の暮らしにふれるプログラムの提供を予定しています。これらは、単に旅行のアクティビティとして経験するのではなく、『人としての原点の暮らしのお裾分け装置』として提供できたらと思っています。宿というより実家や別荘というふうにとらえていただけると良いと思うし、ゲストの方にとって“もう一つの生活の場所”、“人生の中での拠点の一つ”と思っていただけるととても嬉しく思います。そこに“親切なご近所さん”、“自然の中での暮らしを大切だと思う仲間”として僕たち家族が伴走できたらいいなと思います。 例えば地方移住って、興味はあるけど状況的に難しい方もいますよね。でも子どもには自然体験をさせてあげたい。そんな方には、年に数回『古民家ゆうなぎ』に泊まりに来ていただければ、四季を感じながら、その時々の原点の暮らしを体験できます。そういう経験の中で、本格的に移住したいなと思う方がいたら、今度は僕たちがなにかサポートができたらと思っています」 古民家ゆうなぎなぎ沙さん「あとは、お母さん同士が深くつながれるコミュニティも、古民家宿を拠点に作りたいと思っています。イベントではなく、週1回ふらっと来て話せるような場所のイメージです。子育てって、『お母さんが幸せでいることが子どもの幸せ』だと本当に思います。じゃあお母さんの幸せって何かなって考えると、『周りの人と繋がって幸せを感じられているか』だと思うんです。 子育てをしてると、『今誰かいてくれたらいいのに〜』って思う瞬間があります。大人と喋りたい瞬間があります。そんな時の場所として、『古民家ゆうなぎ』が繋がれる場になって、話ができる場になれば、それだけで子育てはもっとラクになるんじゃないかなと感じます。

子どもが“家族の一員”として生きる場を作る

稲刈り 育児に宿の運営にと、理想とする自然の中での暮らしである一方で、今後の構想もいろいろあるようです。  また、古民家の運営や今の生活は、“子どもに役割をもたせる”という教えも担っていると語ります。それは単にお手伝いをさせるとか、労働力として期待するといった話ではないといいます。近藤さんの教育方針を聞きました。 裕佑さん「子育てって、いろんな考えがありますが、近年の傾向として、子どもが『家族での生活を成り立たせるための一員』ではなくなっているように思います。本来の家族って、『全員が何かしらの役割を持っている組織』だと思うんです。でも、今の社会での子どもって、”学校行って塾行って、ゲームして終わり”になっていたりします。それって、家族の中での役割を持っているようで持っていない気がするんです(少なくとも短期的には)。そしてそれが本人の家庭内での存在感、ひいては自己肯定感を低下させているのではと思うんです。 こんな話があります。モンゴルの遊牧民は、引っ越しの際に3歳の子どもでも、ちゃんと役割があるそうです。やかん1つを運ぶとか、そういうレベルの役割ですが、誰しもが役割を持ち、家族と関わることは存在感を見出していくためにも、とても大事だなと感じます。田舎での暮らしは、家族が必然的に”群れ”になります。僕はこの古民家運営や地方移住の生活では、子どもをちゃんと家族の仲間にしたいと思っています。だから、『家族のためにやれることはやろうね』って常に言っています。 また、それを具現化するチャンスが、今の生活にはたくさんあります。宿のお客様を迎え入れるとか、雪かきを一緒にするとか。畑仕事をするとか。実際、長男は宿の土間を箒で掃いたり、お部屋に飾る花を採って生けたり、山菜の採り方もお客様に伝えてくれたりしています。もちろんスキルはまだ足りませんが、やろうってマインドは芽生え始めているかなと思います。こうした感覚的な経験も、宿に来ていただければ育むことができるんじゃないでしょうか」 仕事 宿は2025年4月にオープンしたばかり。限界集落は“閉じた場所”というイメージがありますが、近藤さん一家のように宿をオープンしなくても、そこでの生活で自らが“つながりを生むハブ”になるよう、暮らしを育て、居場所を築いていくことは可能です。今後も近藤さん一家のチャレンジと、自然とともにある生活は続きます。  都会で虫を探すのもひと苦労な暮らしの中でこの話を聞いた筆者は、まずは子どもにどんな役割を持たせられるかを、考えていくところから始めたいと思ったのでした。 近藤さん一家 【近藤裕佑】 赤ちゃんから楽しめる一棟貸しの宿「古民家ゆうなぎ」・自然体験活動団体「かが杜の学び舎ゆうなぎ」代表。自然体験活動指導者や教員としての経験を活かし、「原点教育(人間の古くからの生活や自然に触れ、これからの生き方を考える教育)」を主軸に自然・文化体験活動を提供する。YouTube:@kont_juniorhighschool_societyでは歴史の講義通しての知識面からの原点教育を試みる。 【近藤なぎ沙】 「古民家ゆうなぎ」「かが杜の学び舎ゆうなぎ」副代表。元学童保育支援員。保育士・幼稚園・小学校教諭免許を活かし「つながる子育て」をモットーに、自然・母親・親子がつながる居場所づくりや、「親子向け里山里海ステイ」の受け入れも構想中。木育インストラクター、おもちゃコンサルタントとしても、木のおもちゃの魅力発信や木育活動を行う。 <取材・文/おおしまりえ>
おおしまりえ
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518
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