
愛犬リリー
そんなある日のこと。夜中、ピッピッという電子音で目が覚めました。
私は家電のセッティングが大の苦手ですので、必要以上に「電子音」を発するものは我が家にないはずなのですが……この音、思い出しました。体重計の音なのです。
体重をはかるとき、スイッチを入れたときのピッピ音。実は最近体重計を使うことがほとんどなかったのですが、置いている位置的に我が家の愛犬の体が触れればまあ音がならなくもない。リリーが涼を求めて体重計のある部屋に移動したのかな、と顔をあげてみれば……“本犬”は私の足元ですやすや寝ているではないですか。
夜中に体重をはかっているのはどちらさまですか!? という気持ちになりましたが、愛犬が反応していないということは不審者ではないということ。まあ、侵入者じゃないならいいか、と深く考えることをやめました(ちなみに、私は巨大な顔を見た例の部屋で寝ております)。
さあ、そんなことがあったことも忘れかけていた先日、社会人の弟が実家に帰省してきました。
帰ってきたのは夜中。玄関先で汗だくで疲れている弟を囲んでわいわいするわたしたち実家メンバー。
「いつかえるの?」と弟に声をかけたときのことです。私たちの後ろに置いてあった扇風機がいきなり「どうしたの?」と会話に参加してきたのです。
何を言ってるのという感じかもですが、我が家の扇風機はなぜかしゃべる(?)機能がついています。まったく使いこなしていませんが。先述のとおり家電苦手っこの私はその「しゃべる」機能はオフにし、さらに主電源もオフにしていたのです。なのに……いきなりしゃべってきた。久々にこの扇風機の声を聴きましたよ。
いきなり会話に入ってきた扇風機にかたまる私。弟は「みんなで騒いでたから反応したのかね」とよくわからない冷静さを見せていました。そして当然ながら愛犬も無反応。
我が家にはどうやら体重をはかり、そして弟が久しぶりに帰省すると嬉しそうに会話に入ろうとするお化けさんがいるっぽいですね。
亡き祖母では、という説もありますが、よくわかりません。ここでなにかオチがあったり、伏線の回収があれば最高なのでしょうが、これ以上何もないところがちょっとリアルじゃないですか?
だれかわからないお化けさん(?)ですが、無害でしかもリリーともうまくやっている様子ですので、特に追及はしないでおきます。
私にはちゃんと同居人がいたんだわ。不思議と怖くない。そんなプチ怪談でした。
<文/アンヌ遙香>
アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『
アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram:
@aromatherapyanne