朝ドラ『あんぱん』、戦時中の日本の描写で「やらなかった表現」とは? “お涙頂戴”を作らない制作のこだわり
“逆転する正義”を体現した、新たなヒロイン像
とはいえ、「かなりの賭けですよね」とヒロインを戦争に迎合させることに怖さもあったようだが、「危機感はあったけど、そこは思い切って描かないといけないと思っていました」と振り返る。
そんなのぶ役はオーディションを経て、今田が選ばれた。柳川氏は「すごく純粋な精神を持っている人だと思ったんです」と選考理由を話す。
「だからこそ、当時の“正義”に順応できるし、8月15日を境に価値観を変えることもできる。そんなのぶを今田さんなら上手く演じられると考えました。また、のぶは共感されにくいヒロイン像ではありますが、『今田さんが演じることで、“100%の嫌悪感”を持たれることはないだろう』とも思いました」
蘭子と豪の回想シーン、演出の背景は
ちなみに、この回想は“豪と蘭子のエピソード0”と位置づけており、「ライクがラブになった瞬間だから思い切りやってください」と説明して撮影したという。河合はもちろん、細田の演技力があったからこそ、蘭子の表情や言動に視聴者の目頭が熱くなったのだろう。
柳川氏をはじめとする制作陣の「当時を描く」という意識が、本作の魅力と重厚さにつながっている。当時を生きた人々の等身大の姿をこれからも見届けていきたい。
<取材・文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
1
2


