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『あんぱん』で“軍国主義に染まった”のぶは、“私たちと同じ”だった。のぶに託された「戦争の怖さを伝える」使命とは? 演出家が語る

棲み分けが進んだ現代社会

 「戦争反対」という至極当たり前のことを“政治思想”と解釈され、妙なラベリングをされるようになった昨今。柳川氏は「私自身も“リベラル派”だと思われがちです。でも、戦争に右も左もありません。正しいことは正しいし、間違っていることは間違っている。それを伝えたいだけなんですけどね」と語る。  2024年の「ユーキャン新語・流行語大賞」に「界隈」という言葉がノミネートされたように、社会の“棲み分け”は進行している。今や「戦争反対」という常識でさえ、届かない人には届かない時代になったのかもしれない。

「のぶを“他人事”ではなく“自分事”として」

 改めて『あんぱん』を通して伝えたいことを尋ねる。 「やなせさん夫婦の半生を約70年間にわたり描いています。その中で、どのような出来事が起き、どんな考え方を持って生きていたのかを少しでも知ってもらえれば。そして、それが今を生きるうえでの考え方のヒントになれば嬉しいです」  また、注目ポイントとして「のぶ(今田美桜)は今を生きる私たちが陥りがちな姿を体現しています。のぶをフィクションの中の“他人事”ではなく“自分事”として捉える人が増えれば 、この作品を制作した意味があったのかなと思います」と続けた。  時代に流され、軍国主義に染まったのぶ。この時点では共感も応援もしにくい存在だが、“空気”を疑うことなくついつい流されてしまう姿は現代を生きる私たちと重なる部分がとても多い。だからこそ、のぶに自分自身を重ねることによって、彼らが生きた時代の温度感がより鮮明に伝わってくるだろう。  戦争や大切な人の死といった記憶に残る出来事が連続した前半3か月が終わり、後半3か月ではどのような展開が待っているのか、今後の放送も注目したい。 <取材・文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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