ドラマ『VIVAN』と同様に「SNSで発信したくなる」心理
他、気になった投稿として、
「テレ東、インタビュー付きでASKA出しててすごい」「のんと堀込泰之を前になぜ『好きな食べ物は?』と小学生並みのインタビューをするのか」「hitomiがLOVE2000じゃなくてCANDY GIRLを歌ったというあたりテレ東らしい」「セレブタレントになった石田安奈がセンターのAKBって……」
など、思わず今からでもTVerなどで見てしまいたくなる気になるつぶやきが多数タイムラインに散見されていました。
これらはMC不在により、ツッコミどころの解説や説明、言及がほぼないことで、
視聴者の誰かに話したい欲求や共有したい気持ちがネットにあふれた結果なのではないでしょうか。
昨今の大型音楽番組は長時間放映も多いため、タイムテーブルをチェックし、興味のあるアーティストだけ見てチャンネルを変える、あるいは配信で見たいところだけ見るという人が多いといいます。SNSも盛り上がれど、推しのアーティストを絶賛するだけの投稿ばかりで、興味のない人がわざわざテレビをつけて見たくなるほどではありませんでした。
しかし、今回のテレ東音楽祭は、
MC不在のおかげで、SNSで思わず視聴者が発信したくなる余白が生まれました。ドラマで言う『VIVAN』(TBSテレビ系)や『占拠シリーズ』(日本テレビ系)のように、考察やツッコミどころを視聴者に委ね、作品とは別の部分で盛り上げる手法が、音楽番組でも取り入れられているように感じました。
これはうまくやらないと大スベリして、批判だらけになってしまうやり方ではありますが……。
この『テレ東音楽祭』では、屋敷さんの存在やそのツッコミの空回り気味が、逆にこの番組に真面目に取り組む出演者に対してのほどよいスパイスになって、おふざけバラエティとしても、真面目な音楽番組としても成立しているものになっていたと思います。
MC不在という窮地を乗り切っただけでなく、興味ない視聴者も思わず見続けてしまい、そして
誰かに思わず話したくなるようなカオスなこの『テレ東音楽祭』を作り上げたテレビ東京。さすが、テレ東と、その揺るぎない緩さに拍手を送りたいです。
この『テレ東音楽祭』の全体テーマは前述したとおり「歌の伝説100」。伝説は三木道山さんのみならず、この番組の存在そのものが成し遂げたと言ってもいいかもしれません。
<文/小政りょう>