
二極化の背景
データを見ていて感じるのは、そもそも「海外旅行にあまり興味がない層」そのものが増えてきているということです。そしてその理由には、大きく3つの要素があるのではないかと思います。
1つ目は、世界情勢。
特にコロナ禍の影響は大きかったと思います。数年間、物理的に海外との接点が閉ざされたことで、「海外=遠いもの・怖いもの」というイメージを持ってしまった人も少なくないのではないでしょうか。
かつては「いつか行ってみたい」と思えていた場所が、どこか不安やリスクと結びついてしまった。そんな感覚が残っている人も多いように感じます。
2つ目は、経済状況。
これは前述のデータからも明らかですが、「海外旅行は高いもの」という認識が以前よりも強くなっている印象があります。円安の進行に加えて、現地の物価高(インフレ)も影響し、費用はさらにかさみます。
さらに、国内の生活費の上昇、奨学金返済など、日々の暮らしそのものが厳しい中で、「海外に行く余裕なんてないよ」という声が本当に多く聞かれます。
3つ目は、スマホテクノロジーの進化。
特にSNSの発展により、海外の情報が“行かなくても手に入る時代”になったことも影響していると思います。InstagramやYouTubeを通じて、タイの屋台も、パリのカフェも、NYの街並みも、手のひらの中で見られる。便利な反面、「行かなくても行った気になってしまう」のが今の時代です。
リアルな体験への渇きが薄れつつある今、海外旅行そのものが「非日常」ではなくなっているのかもしれません。

とまあ、確かにデータを見てみると、「最近の若者は海外に行かなくなっている」という傾向は、はっきりと表れているように思います。でも、私はそんな「内向き」ともいえる方向性に、やっぱり寂しいなと思っている派でもあります。
というのも、私自身にとっての「海外旅行」は、単純に「旅行=娯楽」を超える意味のある体験だと思っているからです。
私自身の体験でいうと、ニューヨークという街がものすごく好きで、ここはもう、私にとっては人生の節目節目で何度もリピートしている場所でもあります。
私が初めてニューヨークに行ったのは、18歳のとき。大学生だった私は、ニューヨークに滞在している友人を訪ねて、初めてひとりで海を渡りました。
そのときは、英語もまともに話せなくて、正直、ニューヨークという街に完全に打ちのめされました。マンハッタンの目的地にたどり着くまで、気の遠くなるような時間がかかってしまいました。
ニューヨークって、誰にでも平等に冷たい街なんですよね。多民族都市なので英語が話せない人って多いんですが、そこを優しくサポートするようなカルチャーはなく、少しでもモタモタしていようものなら、「NEXT!」ってバッサリ。
でもその潔さ、スピード感、緊張感のある空気が、私は好きで、東京ではマジョリティの中でなんとなく生きていた自分が、まったく通用しない環境に投げ込まれたことで、視野がガラリと変わった気がしました。
それ以来、私は何度もニューヨークに通うようになり、ブロードウェイのエンタメを味わい、ショッピングを楽しみ、さまざまな表情のNYに出会ってきました。