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朝ドラ『あんぱん』24歳俳優の“眉間の動き”から目が離せない。戦中から戦後にかけての変化も

戦時下の希望として感じるツーショット

NHK『あんぱん』©︎NHK 高橋による人懐こい眉間は、『あんぱん』戦時下編の拠り所みたいな役割がある。上述した食卓場面を捉えるカメラは、基本的に嵩と健太郎それぞれのアップと引きの絵で構成されるのだが、引きの絵として写るツーショットは、戦時下の希望として感じる。  嵩も召集され、第10週第50回では配属先の上等兵・八木信之助(妻夫木聡)から怒声を浴びせられる。先輩兵や上官からの叱責にひるんでばかりいる嵩だが、第11週第52回で健太郎と再会を果たす。  嵩が靴を磨いているところへ健太郎がやってくる。そこには形相を変えて上官たちのような口調になった健太郎がいる。嵩は身をすくめて「健ちゃん」と呼びかけるが、健太郎は態度を変えない。嵩をからかう演技だったとわかると、あの食卓場面のようにツーショットが一瞬で華やぐ。

希望の大粒として結晶化する戦後場面

NHK『あんぱん』©︎NHK「たくましくなったな」とひとりごちる嵩同様に、視聴者からしても高橋文哉がなんとも達者な演技をする俳優になったなとしみじみ頼もしい気持ちになる(実際、高橋は役作りのために増量している)。戦時下のそれも軍役場面でさえ、このツーショットがあれば気分は晴れやかでいられる。  同回では陸軍幹部候補生の試験勉強に励む嵩に健太郎があんぱんを差し入れる場面がある。あんぱんをサッとわたすその手元と厩舎で会話する表情など、ツーショットに前後する単独ワンショットどれもが清々しい。戦時下が過ぎ、戦後になるといよいよ希望感が浮かぶ瞬間も見逃せない。  第13週第64回で福岡に帰っていた健太郎が柳井家にやってくる。玄関でひと際快活な調子で再会を喜んで、眉間を盛んに動かして健太郎役の魅力があふれる。  嵩と健太郎は不良品回収をひとまずの生業にするのだが、第14週第67回で浮かない顔で手にした漫画雑誌に熱心な眼差しを注ぐ嵩を見つめる健太郎が画面奥でピンぼけながら眉間に力を込めているのがわかる。  嵩が読む雑誌名は「HOPE」。この屋外場面では雪が降っている。その一粒一粒と高橋文哉の眉間の魅力がまさに希望の大粒として結晶化しているように写っているように感じたのは筆者だけ? <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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