役者経験が少ないながらも、印象的な演技を連発した背景は何なのか。それはミュージックビデオ(MV)への出演の多さが挙げられる。ドラマや映画にはあまり出演していないが、ミセスのMVには当然登場が多い。MVは曲を聞かせる映像のため、声で演技することはほぼない。表情やしぐさで感情を伝える必要があるが、その経験が大森の演技力の下地を作ったのではないか。

『ニューズウィーク日本版 2025年7月15日号 特集:大森元貴 言葉の力』(CEメディアハウス)では時代を映すアーティストとして表紙を飾り、ロングインタビューに答えた
そうなると今後は音楽を主戦場とする人たちの演技も楽しみになってくる。現在、野田洋次郎(RADWIMPS)はドラマ『舟を編む』(NHK総合)、Fukase(SEKAI NO OWARI)は映画『はたらく細胞』など、ミュージシャンが映像作品で存在感を発揮している例は少なくない。彼らが惹きつける演技ができている要因にMVがあるのかは不明だ。
ただ、かつての筆者のようにミュージシャンだからといって「演技が拙い」と安易に決めつけることはない。ミュージシャンがどのような演技を見せるのか、なにより大森の今後の出演作も待ち遠しくなる。
<文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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