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「『あんぱん』を“面白かったね”で終わらせたくない」妻夫木聡の言葉に込められた意味。制作と俳優が共有した“覚悟”とは

のぶと嵩の幸せを象徴する「重要シーン」

 また、本作でとりわけ気合いを入れたシーンはどこなのか。倉崎氏は「戦争パートはもちろん、色々なシーンがありますが、アパートでのキスシーンもです」と話す。 「天井に穴が開いているオンボロアパートに住み、そこから晴れた日には綺麗な星空が見える、ということは史実通りです。やなせさんの自伝を読んだ時、『アパートから星空を見るシーンは絶対描きたい』と思い、中園さんのアイデアでそのシチュエーションを初めてのキスシーンの舞台になりました。  自伝などの中には『お風呂はなく、トイレは共同。トイレの天井には穴があき、雨の日は傘をさして入らなければいけないが、晴れた夜には星が見える。そんな暮らしがおもしろく、オンボロアパートから星空を見ていたあの頃が一番幸せだったかもしれない』という趣旨のことが書かれていて、“物理的な豊かさ”よりも“2人で寄り添いながら綺麗な星空を見ること”に幸せを感じている、というのは2人らしいなと。実際にキスをしていたのかは不明ですが、2人の幸せを象徴するような重要なシーンになるように描きました」 NHK『あんぱん』 2人が贅沢三昧をするシーンはない。贅沢をしなくても2人でいられれば幸せだからこそ、わざわざ贅沢をしないのだろう。2人の人柄、さらには愛の深さをより鮮明にさせるシーンと言える。

『あんぱん』は「ドリームチームだった」

 いよいよクライマックスを迎えようとしている『あんぱん』。注目ポイントとして「逆転しない正義の象徴である『アンパンマン』にどのようにしてたどり着くのかを見てほしいです」という。 「『アンパンマン』が生まれる過程以外にも、各登場人物がどういう終わり方、どういう節目を迎えるのかも楽しみにしてもらえると嬉しいです。また、26週は最終週ではありますが、戦争を経験した“ある登場人物”の葛藤も描いているので、最後まで戦争についても考えてもらえればと思います」 NHK『あんぱん』 最後にクランクアップした今の気持ちについて「今振り返ると、奇跡のような座組で、奇跡のような時間を過ごせていたんだなと思います。キャスト陣、スタッフ陣含めて本当にドリームチームでした」と語る。 「朝ドラを制作する場合、メインキャストは1年間、朝ドラの撮影をしなければいけないため、他の作品にはなかなか出演できません。また、準備や撮影のために2年近く『あんぱん』に携わっているスタッフもいます。本当にみなさんの人生の貴重な1年、2年を『あんぱん』という作品にかけてくれたことには感謝しかありません」  感謝を口にした倉崎氏は「キャスト、スタッフ一同、強い気持ちを持って制作に臨んでおり、その熱量が視聴者のみなさんに届いてくれたら、これ以上ない幸せです」と締めた。 『アンパンマン』誕生の背景に込められた願いがどのように描かれるのか、最後まで目が離せない。最後まで「正義とは何か」を問い直させてくれる内容になるはずだ。 <取材・文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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