いざ祐子さんが部屋に入ってみると、新しくてきれいなのに、妙に空気が重く息苦しい感じがしたそう。
「そして、
私がつい手を滑らせてスマホを落とすと、間髪入れず壁を叩く音がして。それがなぜか1箇所からだけでなく数カ所から同時に聞こえてきたような気がしてゾッとしました」

圭佑さんは「やっぱり留守じゃなくて寝ていたんだよ! 静かにしていよう」と縮こまっていましたが、祐子さんは妙な胸騒ぎがして、圭佑さんの腕を引っ張り一緒に外に出ました。
「また隣人の窓を確認してみたら、暗いですがカーテンの奥にぼんやりとした光が見えて、
つい反射的に証拠を残そうとスマホを構えたのですが……」
さて2人に何が起こったのでしょう?
「
窓に向けたスマホの画面に、複数の顔認証のカッコが出てきて……私はあまりの恐怖に息を呑み、圭佑は声にならない声を上げながら腰が抜けてしまったのか、その場にへたり込んでしまったんですよ」
とにかく逃げなければと焦った祐子さんは、圭佑さんを無理矢理おぶると、火事場の馬鹿力で何とかその場から立ち去ったそう。
「
人間って追い詰められたらとんでもない力を発揮するんですね(笑)。圭佑は私より身長が10cmは高いですが、細身なのでギリギリ背負うことができた感じです」
その後、圭佑さんはピンチの時に自分をおぶってまで助けてくれたことに感激し、祐子さんにプロポーズ。例の部屋はすぐに解約し現在は結婚の準備をしつつ祐子さんの部屋で一緒に暮らしています。
「結果、私の望む結末になって良かったのですが……本当に怖い思いをしました。後から知ったのですが、
どうやらあの隣の部屋には誰も住んでいなかったようです。でもきっとたくさんの何かがいたってことなのかな? とたまに思い出しては鳥肌を立てているんですよ」と苦笑いする祐子さんなのでした。
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<イラスト・文/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop