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高市氏「ワークライフバランス捨てる」発言が刺さった“意外な層”。40歳・元TBSアナが読み解く

高市氏の発言は40代〜60代の女性に刺さっている?

 今回の「ワークライフバランス発言」のSNS上での受け止め方、言説を分析してみた私は、ひとつ気づいたことがあります。どうやら40代から60代の女性に特に刺さっている人が多い印象があるのです。  中でも特に、自分は仕事だって、家庭だって育児だって頑張ってきた、本当に自分の時間がなかったけど、労働が好きだし、今があるのはあのときの艱難辛苦(かんなんしんく)があるからだ! と今でもバリバリなんらかの形で社会と関わりを持ち続ける女性たち。  男女の別をもうけるのはナンセンスかもですが、日本ではじめての女性総理大臣誕生かということで、これまで政治的発言から距離をとっていた人でも「女性総理が誕生して嬉しい!」「実は応援していた」とSNS上で急に表明し始めたこの世代の女性がまあ目立つ。  高市氏の言葉に自分の歩んできた人生を重ね、誤解を恐れずに言えば、共感をしている層が確かに一定数存在すると言うことではないでしょうか。  自分はずっと若いころから寝る間も惜しんで働いてきた、その中で結婚し、こどもを産み、子どもが熱を出せば会議に遅刻したこともあったし、家事の分担でもなんど夫ともめてきたことか。自分は自分の時間を削ってとにかく家族のため、もしくは社会のためにかんばってきたんだ、という思いを胸の内にこれまで隠してきた女性たち。言いたいことは山ほどある! 自分はとにかく頑張ってきたし、頑張っている!  そんな思いが積み重なってきていた中での高市さんの発言。自分のこれまでの頑張りを「今、私がまずそうだし、これまでもワークライフバランスなんてなかった! とにかく私たちはがんばりすぎてきて、今があるんだ!」という気持ちでもって受け止めた人が多かったのではないでしょうか。  過剰な労働や、私生活を犠牲することが美徳だとは思いませんし、ある種それがもてはやされる時代に逆行することも非常に危険だとは思いますが、言葉にならない熱い思いが、40代から60代の多くの女性の中にくすぶっていたのもまた事実ではとも感じるのです。

世の中はなにを女性に求めているのか

アンヌ遙香さん 先日ジョンカビラさんがNHKの番組に出演した際、女性地方議員の特集を受けて、子育てし、仕事し、介護し、家事をし、「女性ばかりがいつもスーパーウーマンであるのを求められるのは大変すぎやしないか」という旨の発言をされていて、多くの共感を呼んでいました。  女性になにかを頑張らせる傾向はまだ目立ちます。大変なのは男も女もない、というのもわかっていますが、仕事と家事の両立、という点からみるとまだまだ女性のほうが頑張っている家庭が圧倒的に多い現実。スーパーウーマンであることを求められ続けることにみんな疲弊しています。  言葉尻をとらえてニュースにしつづけるのは時間の無駄。ですが、なぜ、高市氏の発言が一定の女性たちに響いたのかというと、それだけ多くの女性は疲れきっている、というのが指摘できやしないかと感じる私。  やっぱり介護ひとつとっても、「嫁」的存在の家庭内の女性がメインを担う仕組みはずっと基本的に変わっていない訳です。  世の中はなにを女性に求めているのでしょう。働いてほしい? 産んでほしい? 介護してほしい? 全部してほしいんでしょう。  さあ、高市総理大臣は今後どのような政治運営をしていくのか。多くの女性の負担が軽くなる抜本的な変化が日本におきますように。 <文/アンヌ遙香>
アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne
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