これらの言動だけを見れば、怒りがふつふつと湧き上がってきそうではある。ただ、視聴者の神経を逆なでするような動きを幾度となく見せている勝男ではあるが、当然イライラはするものの、“チャンネルを変える”という選択肢が頭をよぎるほど怒り心頭というわけではない。
その理由として、イラッとさせるところはしっかりとイラッとさせながらも、“根は良い人”と思わせることで、必要以上に嫌悪感を抱かせないように竹内が巧みに演じている点が挙げられる。
本作は決して古い価値観を持つ人を批判することを目的としていないように思う。だからこそ、勝男に敵意が向けられないように調整している竹内の演技力には脱帽だ。それゆえにSNSで好意的な声が相次いでいるのだろう。
2024年9月には『西園寺さんは家事をしない』、2025年4月には『対岸の家事』など、TBS系のよる10時枠で放送されたドラマには家事を題材にした作品が多い。ただ、家事や育児の大変さを示してはいるが、それらに無頓着な人を糾弾するような内容ではなく、あくまで諭すような見せ方だった。上から目線ではなかったからこそ、いずれの作品も人気を博していたように思う。
本作でも、料理に取り組み、考え方を改めようと歩み始めた勝男を見た白崎は南川に対して、「海老原さんみたいな人って、多分何言っても一生変わらないんだろうなと思ってたんだけどさ、でもそれって俺の決めつけだったかも」と反省の言葉を口にしていた。今の時代の価値観が“そうなっている”だけであり、常に正解を疑い続けなければいけない姿勢の大切さに気付かされる。
竹内の演技を楽しみながらも、本作が示すメッセージにも注目していきたい。
<文/望月悠木>
望月悠木
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):
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