人の“当たり前”は育った環境によって違うものです。そしてコロナ以前の私たちの衛生観念も、今よりずっと大らかで、多少のことには目をつぶっていたように思います。
昔は「
おばあちゃんが握ったおにぎりは世界一おいしい」のように、人の手で作られたこと自体に価値を感じていた人も多いのでは? それが今では、「直接手で握ったものなんて食べられない」と感じてしまう人も多いようです。そんな温かみや優しさまでも失われていくことに、少し寂しさを覚えませんか?

とはいえ、感染症や食中毒のことを考えると、奈緒子さんのように“気になってしまう”のは当然のこと。誰かを責めたいわけではなく、
自分や家族の健康を守るために、衛生面で線を引くのは決して間違っていません。
「お寿司を前に場が凍ったとき、明人がスッと私の隣に立ち、穏やかな口調でこう言ってくれたんです。『母さん、奈緒子は気を遣っているだけだよ。俺は奈緒子の気持ちを大事にしたいからさ。もちろん母さんのことも大切だけど……分かってほしい』と」
その声には、母と妻の両方を思いやる誠実さがにじんでいました。
衛生観の違いも、世代のズレも、どちらかが折れるだけでは解決しないのかもしれません。ですが明人さんのような行動が、歩み寄りのきっかけになるのではないでしょうか?
生まれた時代や個人間で、価値観の違いが出てくるのは仕方のないこと。
大切なのは“相手を否定すること”ではなく、自分の感じた違和感を丁寧に伝えることだと思います。そこからの話し合いこそが、最も大切なコミュニケーションなのかもしれません。お互いに“相手を思う気持ち”を忘れずにいたいものですね。
今回の奈緒子さん夫婦のケースは、義母との関係に限らず、あらゆる人間関係に通じる大切なヒントを教えてくれます。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop