『もしがく』視聴率イマイチでも歴史的価値は大!『ふてほど』などに見る“昭和・平成”回顧ドラマブームの裏側
菅田将暉主演、三谷幸喜脚本、そして出演者は神木隆之介、二階堂ふみなど主演級の布陣が揃った木曜ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系/以下『もしがく』)。
この作品では、1980年代の渋谷を舞台に奮闘する人々が生き生きと描かれています。『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)、『不適切にもほどがある!』(TBS系)など、ここ数年のドラマは80年代~90年代の世相を描く作品が多く、軒並み話題を集めています。
昭和・平成レトロブームということもあるでしょうが、昨今、なぜ多くの昭和・平成回顧ドラマが制作されているのでしょうか?
『もしがく』は、脚本家の三谷幸喜氏が日本大学芸術学部(日芸)に通っていた学生時代、渋谷の劇場に出入りしていた際の思い出が元になったというドラマ。視聴率的には苦戦しているものの、業界内やその時代を知る30代半ば~50代の視聴者には好評な様子です。
同時代を過ごしていた日芸の後輩・爆笑問題のふたりは、『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ/10月7日放送)で「ちょうど俺らが日芸に行ってた時だもんな」などと青春を思い出しながら、楽しそうにドラマトークを繰り広げていました。
『もしがく』では、毎回コージーコーナーのジャンボシュークリームや禁煙パイポなど、当時を思わせる懐かしいアイテムがストーリー内で紹介されています。古き渋谷の街並みや、かつて存在していた渋谷OS劇場を思わせる場所も登場し、当時を知る人々にとって「エモい」感情を呼ぶものになっています。
『もしがく』は、三谷幸喜氏の25年ぶりの民放連ドラ執筆作品です。三谷氏いわく、その間に民放のプロデューサーからドラマ執筆の話はあったようですが、世代間ギャップなどで話がかみ合わないことや、2000年前後のドラマ作品が思うような世間の評価を得られず、居場所を見いだせなかったこともあり、時間が空いてしまったのだそう。
今回のドラマ執筆にあたり、若いプロデューサーと意見をすり合わせていく中で、今の時代の人々は自分は書けない、昭和という時代劇であれば誰よりもうまく書けるという意向から、昭和を舞台にしたこのドラマが生まれたといいます。※YouTubeチャンネル「ホイチョイ的映画生活~この一本~」馬場康夫氏との対談より
年齢や時の流れで筆致や作風が変化するのは作家として当然のことではあります。宮藤官九郎氏も、かつては『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』など、その時代に生きる若者を強烈なリアリティをもって描いたドラマを生み出していました。
ですが近年は『ふてほど』や映画『ストリート・キングダム』などの近過去を描いたものや、40代前後の主人公が活躍する作品が中心です。
近過去を舞台にした作品が増えているのは、若者を主人公にした現代劇を「実績ある脚本家が積極的に描こうとしなくなった」というような背景がひとつにあるのかもしれません。
なつかしいアイテムに沸く大人世代の視聴者
宮藤官九郎氏脚本の『不適切にもほどがある!』(2024年放送)でも、当時のアイドルや懐かしいドラマを思わせるシーンが多数登場。バカリズム氏脚本『ブラッシュアップライフ』(2023年放送)でも、たまごっちやNANAなど、アラサーやミドサーに刺さるエピソードや小道具が使われ、SNSを盛り上げていました。 そんな30代~50代には好評な『もしがく』の視聴率が伸び悩んでいる要因には、Z世代など若い世代が置きざりになっている可能性が捨てきれません。



