なるべく静かに、泣かせないようにと心がけながら過ごしていたという佐江さん。
しかし、ある日とんでもない出来事がおこります。
「子どもの幼稚園が休みだったので、昼間、子連れで買い物に行ったんです。その帰りに、駐車場で事故してしまって。助手席に座っていた5歳の息子が開けたドアが、思いっきり隣の車にあたってしまったんですよ」
息子があてた隣の車には、ドアがあたってしまった箇所が3cmほど、白い線になった傷ができてしまっていました。
「泣きそうでした。でも、まずはしっかり持ち主に謝ろうと思って。持ち主のお宅へ行ったんです」

チャイムを鳴らして出てきたのは、50代の女性でした。
「申し訳ありません」と佐江さんが謝罪すると、その女性は眉間に皺を寄せてこう言ったんだそう。
「お宅、何度目なの? いい加減にしなさいよね! うちの主人、なんて言うかしらね」
その言葉にびっくりした佐江さん。佐江さんがその女性に会ったのはその日が初めてでした。女性は続けます。「あなたに子どもが生まれてから、車に小さな傷が増えたの。あなたの子どもがやったのよね」と。
「頭の中が真っ白になりましたね。これまでトラブルがないように細心の注意を払っていたし、子どもが駐車場で遊ぶことなんて絶対になかったので」
佐江さんは動揺しながらも謝罪し、傷の確認を終わらせた後、家に帰ります。